2012.06.25
# 雑誌

なぜか「患者」は大企業のサラリーマンと公務員ばかり「新型うつ」これが真相です

週刊現代 プロフィール

「彼も、休職中に海外へ旅行したと話したので、私が『海外へ行ける体力が出てきたなら、そろそろ職場に戻ってがんばってみたらどう?』と言ったんです。その途端、目の色を変えて『先生、いまうつ病の私に〝がんばれ〟って言いましたね!?精神科医なのに、患者にそんな言葉をかけるんですか!』とすごい責め方をされました。しまいには、『うちの職場がどんなにつらいかわかってないからそんなことを言うんだ!先生は椅子に座って人の話を聞いてるだけで給料をもらっているんでしょう』と言われ、返す言葉がありませんでした」

 このように、患者が医師の言葉尻をあげつらうのは珍しいことではない。新型うつの主な特徴として、吉野医師は、(1)自らうつであることを主張する、(2)他者非難、他責傾向が強い、(3)職場復帰を極力後回しにする、といった傾向を指摘するが、患者Bは、まさにこの3つに当てはまる。

 新型うつが増加してきた背景には、以前は「人に知られたくない病気」だったうつへの偏見が薄れ、うつであることをカミングアウトしやすい風潮になってきたことも関係しているだろう。「うつは心の風邪」「うつの患者に『がんばれ』と声をかけてはいけない」といった〝常識〟も広く浸透した。

 これにより、やたらとうつに詳しく、診断書目当ての「患者」も増えている。

「20代前半のCさんという女性でした。初診で、『夜眠れなくて、ご飯が食べられなくて、夜ひとりでいると涙が出てきて・・・・・・』と流暢に症状を語るんです。彼女の爪には派手なネイルアートがほどこされ、メイクもばっちり。従来型のうつ病だったら化粧する余裕なんてありません。しっかりとした口調で、教科書的なうつの症状を訴える姿から、診断基準を調べて暗記してきたのだろう、と思いました」(前出・吉田医師)

休職中も給料満額

 患者が症状を訴えるのであれば、医師は信用するしかない。それが精神疾患の診断の難しさでもあるのだが、つまり、医師としてはうつ病の診断基準を満たす条件が揃っていれば、うつ病と診断せざるを得ないということだ。

「うつは、真面目で几帳面で仕事熱心な人がなる病気、とアピールしすぎたことが、世間の誤解を招いているところもあると私は考えています。うつだという診断書が手に入れば、会社に対して『自分はがんばりすぎたからうつになった』と大手を振って休めるようになるわけですから」(前出・吉野医師)

 取材を進めると、こんな事実が明らかになってきた。「新型うつの患者は大企業と公務員に多い」と、専門医たちが口をそろえるのだ。それはなぜか。都内で産業医を務める精神科医が、公務員の実情を明かす。

「大きな会社や公務員、つまり療養の制度が整っている職場ほど、新型うつが多いのです。たとえば、休職しても数ヵ月は100%の給料が出る。その後も数年間に及び、給与の8割程度が何らかの形で支給される。また、復職して一定期間が経過すると休職実績が一度クリアされて、また長期間休むことができる場合も多く、ほとんど働かずに給料がもらえる実態もあるのです」

関連記事