二宮清純レポート
三浦大輔 38歳・横浜DeNAベイスターズ
男はいかにして「成りあがる」べきか
「男はなあ、勝ってなんぼの人生だ!」---三浦の応援歌『リーゼントブルース』の冒頭の詞だ。最近2年でわずか8勝。限界説も囁かれた今年、番長は「老い」をねじ伏せ復活を遂げた。スタートはドラフト6位。男はこうして成りあがる。
宮本慎也のアドバイス
「今年は球が違うわ」
思いがけぬ一言が、プロ21年目の38歳にとっては、復活への大きな自信となった。
言葉の主は先頃、41歳で通算2000本安打を達成した東京ヤクルトの宮本慎也。春先、対戦直後のことだ。
昨季、彼は宮本からこんなアドバイスを受けていた。
「ここの壁をポンとひとつ乗り越えたら40歳までできるからな」
最近、宮本の言わんとしていたことが、やっとわかるようになってきた。それこそは復活への手応えを掴んだ何よりの証拠である。
横浜DeNAの〝ハマの番長〟こと三浦大輔が円熟のピッチングを続けている。
6月14日現在、9試合に登板し6勝2敗、防御率2・47。実にチームの勝ち星の約3分の1を、ひとりで稼いでいる。
5月12日の阪神戦ではノーヒット・ノーランに、あとアウト3つにまで迫る快投を演じた。
試合後、監督の中畑清は「神様の上、大神様だね」と褒めちぎった。かつて、このチームが強かった頃には〝大魔神〟の愛称のクローザーがいたが、さすがに〝大神様〟はいなかった。
'10年は3勝(8敗)、昨季は5勝(6敗)しかできなかった男が甦った理由は何か。
「昨年の5月から約2ヵ月間ファームに落ちました。その時、いろいろと考えたんです。たとえばフルマラソンなら年配の方でも若い人に勝てます。しかし、100m走ではそうはいきません。つまり年を取って衰えるのは持久系の筋肉ではなく瞬発系の筋肉なんですね。
そこでファームのトレーニングコーチらとも相談して持久系よりも瞬発系の筋肉を鍛えるトレーニングを増やしました。これは効果がありました。昨年までだと、投げた翌日は錆びついた機械のようになっていた肩やヒジがスムーズに機能するようになりました。ボールにキレが戻ってきたのは、そのためでしょう」
気が付くと、いつの間にか生え抜きではチーム最年長になっていた。DeNAの前身である大洋のユニホームを着たことのある選手はチーム内では彼だけだ。
中畑もベテランの三浦には全幅の信頼を寄せる。