今はアイツとの対戦を楽しみにしています。アイツが投げるボールを決めている時とキャッチャーにリードを任せている時がありますが、僕は大輔主導(のリード)の方が分がいいはずです。読めるんですよ。逆にキャッチャー主導だと読めない時がある(笑)」
38歳と41歳は18・44mをはさんで上級者にしかわからない無言の対話を楽しんでいるようだ。
三浦にはシーズンオフの恒例行事がある。皮のジャケットに身を包み、タオルを首に巻いて矢沢永吉の日本武道館でのコンサートに足を運ぶのだ。もちろん髪型はばっちりリーゼント。ここ数年は長男も連れて行くようになった。
思い起こせば永ちゃんの『成りあがり』の物語は広島駅から東京行きの夜行列車に乗り、不意に横浜駅で飛び降りた時からスタートする。憧れていたビートルズの出身地リバプールも港町だったからだ。
三浦はプロに入って、すぐ永ちゃんの自伝を読んだ。そしてポマードを買って髪を固めた。
「永ちゃんの生き方には随分、憧れました。横浜にやってきたのも何かの縁を感じます。あそこまで成りあがれるかどうかはわかりませんが、まだまだ上を目指したいと思っています」
150勝まで、あと1勝。もちろん、そこは終着駅ではなく、通過駅である。
時間は、まだ止まらない。
「週刊現代」2012年6月29日号より