2012.08.18

Closeup 武田翔太(ソフトバンクホークス)「将棋が育んだ〝野球脳〟」 打者の顔を見れば、何を考えているか分かるんです---
19歳の強心臓ルーキーに迫った

フライデー プロフィール

「序盤に自分が守りでミスをしたけど、相手の攻め手を見つつ、持ち駒(球種や配球パターン)を増やすことで五分五分に戻せたと思います」

 ミスとは初回に与えた四球と直後のヒットのことだ。ただ、興味を惹いたのは「相手を見つつ」という言葉である。そこには武田の驚くべき超感覚が存在する。

「マウンドから必ず見るのは打者の表情。顔を見れば、何を考えているか分かります。あとは打者から出るオーラです。どんな球を待っているのか、どのコースが苦手なのか・・・・・・頭の中にピンとくる。直感的に自分には分かるんです」

 1番から9番までの対戦が一巡する間に、すべての打者を頭の中にインプットする。相手の策を見通し、徐々に自分の戦術の世界へと誘き寄せるのだという。

「相手打線は外角球に飛びついてくる傾向があったので、それを利用しました」

 この試合で初めて先頭打者の出塁を許した6回、その読みが自身を助けた。無死一塁で迎えた4番サブローには変化球でカウントを整え、2ボール2ストライクからの勝負球は136km/hの外角へのスライダーで空振り三振。続く、この試合前までパ・リーグ首位打者だった角中勝也は外角のストレートでセカンドゴロ。最後は今江敏晃をカーブで見逃し三振に斬った。これでプロ2勝目。

まだまだ細身だった高校3年時。夏の甲子園予選では72kgだった体重は、それから1年間で84kgまで増えた

 と、ここまで理想的なキャリアを築きつつある武田だが、今後の長い野球人生では壁にぶち当たることも必ずあるだろう。そんな話を振ってみると、彼は余裕の表情でこう返すのだ。

「高校野球の時も壁はありました。何回でも来ますよね、壁ってやつは。でも対策はちゃんとできてます。その中身は教えられませんが(笑)、ずっと僕は長い目で見て、野球をしてきました。これも将棋と同じなんです」

 何手も先の未来を見通す目こそ、プロの世界で生き残るには必要不可欠。場当たり的に向き合っても上手くはいかない。19歳の若武者の瞳がそう語っていた。

 グラウンドという盤面で飛翔し、見据えるは球界の最強エース。強心臓ルーキーの脳裏には、はるか彼方の道がすでに描かれている。

取材・文:田尻耕太郎(スポーツライター)
撮影:繁昌良司(写真家)

「フライデー」2012年8月17日号より

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