僕が駅前の地図を見ながら、ああでもない、こうでもないと考え込んでいると、息子がさらに苛立ちの感情をむき出しにした声で、再び質問を浴びせてきた。
「お父さん! あと28分もあるよ。どうするの?」
さっきの問いかけの時点から過ぎた1分を引いている。僕は「う~む」と唸るしかなかった。
ASDの特徴が息子の行動と一致していた
僕たちがこんなところに来ることになったそもそものきっかけは、1ヵ月ほど前にさかのぼる。僕はテレビで偶然、「発達障害」を特集した番組を見た。
発達障害については近年、いろいろと報じられているのでご存じの方も多いと思う。発達障害の人は、他人とコミュニケーションを取ったり、対人関係を築いたり、感情を抑制したり、周りの人々と同調して行動したりすることが難しくなって、一般的な社会生活を営みにくくなってしまう。脳機能の障害によって起こると考えられており、「自閉症」「アスペルガー症候群」「注意欠陥・多動性障害」「学習障害」などが含まれる。
そんな発達障害を扱ったテレビ番組には、日本を代表するその分野の権威が登場し、一口に発達障害と言っても多くの種類があることや、それぞれに対処法が異なることなどを懇切丁寧に説明していた。
知らなかった情報が豊富に盛り込まれ、とても良くできた番組だったが、その中で特に、僕の強い興味を惹いたことがあった。「ASD」(自閉症スペクトラム)と呼ばれる症状である。
発達障害の中でも、ASDは、アスペルガー症候群や自閉症も含む総称だというのが番組での説明だったが、僕がその症状に関心を持ったのには、ある理由があった。実は、番組で紹介されたASDの典型的な特徴が、息子の行動と一致していたのである。
なぜ親しい友達がいないのか
番組では、ASDの特徴として、主に二つの点が挙げられていた。
一つ目は「他人の気持ちが分からない傾向があり、人間関係の構築が苦手である」ということ。