2012.12.01

不真面目に働いている僕の真面目な起業家研究

『僕たちの前途』によせて
古市 憲寿 プロフィール

 たとえば高校生の時からビジネスを始めた天才IT起業家、東京ガールズコレクションのプロデューサー、かつて人気俳優でありながら今は映像会社を経営する青年、タイに本社を移したIT企業の社長、富裕層向け投資商品を扱うアメリカ人、NPOを運営しながら友人とシステム会社を営む若者・・・・・・。本の前半ではこうした若年起業家たちの生態系をドキュメンタリー風に描いた。

 しかし『僕たちの前途』は起業を勧める本にはなっていない。それどころか若者の起業に対して、僕はかなり否定的だ。

 理由は簡単で、人脈も経験もお金も相対的に少ない若者が起業するメリットはほとんどないから。法人登記まではできても、収益を継続的に上げるのは難しい。

 しかも日本は若い世代に対する社会保障が脆弱な国だ。一度失敗した人が再チャレンジするのは難しい。実際、国際調査を見ると日本の起業活動率は世界最低クラス。「ベンチャー」やら「ノマド」やらと騒がれながら、日本はちっとも起業が活発な国ではない。

 それにもかかわらず、起業家という存在はいつも社会から過剰な期待を背負わされてきた。時には社会の変革者として、時には経済の起爆剤として、メディアも政財界も起業家を日本の救世主として扱ってきた。

 日本ではこれまで何回かベンチャーブームが起きているが、特にホリエモンが活躍した2005年前後の盛り上がりは凄かった。テレビ局の買収騒動から始まり、最後は劇的な逮捕劇にまで発展。「起業家」がいかに都合よく社会の期待を背負わされ、そして呆気なく糾弾されるのかがわかる出来事だった。

 もちろん、会社に雇われて働く生き方も安泰かどうかはわからない。特に終身雇用が保障されるかどうかもわからない中、低賃金で長時間働かされる若者にとって大企業で働くメリットは相対的に減少している。

 しかも、日本人はそもそも会社や仕事のことが好きではないらしいのだ。国際調査によれば、日本人は他国に比べて仕事に対する満足度が非常に低く、会社に対する忠誠心も低いことが明らかになっている。それなのに過労死を誘発するくらいの長時間労働の国。

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