2012.12.01

不真面目に働いている僕の真面目な起業家研究

『僕たちの前途』によせて
古市 憲寿 プロフィール

 この国で働くのはつくづく大変だなあと思う。

 だけど日本で雇われて働くことが当たり前になったのは、実はそれほど昔のことではない。戦前は国民の大半が農業に従事していた。また戦後しばらくは自営業者が多く、サラリーマンのほうが少ないくらいだった。

 そんな時代には起業というのも、さして珍しいものではなかった。今でもそうなのだが、発展途上国は総じて起業率が高い。なぜなら会社の数自体が少なくて、自分で仕事を始めないと生きていけないからだ。

 かつての日本にはのれん分けという制度もあり、自営業者が丁稚奉公のように働いた後で独立して、一国一城の主となるキャリアパスが存在していた。

 しかし高度成長と共に会社がたくさん生まれ、この国では「雇われて働く生き方」が一
般的になっていく。今や日本の労働者のうち約8割が雇われて働く人。ノマドやベンチャー起業家というのは、多くの人にとっての憧れだからここまで流行するのだ。

 もしもこの先、大企業が当たり前に倒産していく時代になれば、起業家は決して珍しい存在ではなくなるだろう。

ドラえもん』の第一話で、未来の国からはるばるやって来たドラえもんは、のび太に未来のアルバムを見せる。そこで面白いのは、のび太が就職活動に失敗して、自分で会社を始めることになっている点だ。

 サラリーマンになれずに自分で仕方なくビジネスを始める。そんなことがこの国では増えていくかも知れない。いきなり法人化はせずとも、一社だけの給料では食べてはいけずに、複数の職業を持つという働き方をする人の増加は十分に考えられる。

 雇用の話題はどうしても「正社員かフリーターか」という二者択一の議論になりがちだ。しかし、この社会には本当は無数の働き方があるはずなのだ。

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