2012.12.30
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調査レポート 女性読者の皆様、怒らずに最後まで読んでみてください
男たちの思秋期「まさかあの人が痴漢」には理由があった

週刊現代 プロフィール

 組織の中で地位が上がり、同時に体力も失うと、血の出るような努力ができなくなるのは学者もサラリーマンも同じ。自分のいちばん大切なものができなくなるわけですから、存在が全否定された気になり、落ち込んでしまうわけです。

 その結果、とても穏やかだった教授が急に怒鳴り始めたりすることがよくあります。抑制が利かなくなっちゃう。(満員電車で)思わず手が出てしまうのも、その症状の一つだと言えると思います」

 エンジニアや学者だけではなく、文系の仕事でも同じことは起きる。作家の清水義範氏が言う。

「私の場合は50代までガムシャラに働き、60を過ぎて思秋期が訪れました。サラリーマンより時期は10年ほど遅いけど、症状は同じだと思います。仕事が減って、勢いがなくなって不安を感じ、何をやっても面白くなくなった。

 思い出すのは、私の父も定年後、非常に不機嫌で怒鳴り散らす人間になったこと。3年ほど経ったら元の柔和な父に戻った。

 権限や権力を持つとか、自分を中心に物事が回っているとか、そういうことが男の誇りの源泉になる。『俺がいなきゃ困るだろう』と思ってやっていたのが、『いや、もうあなたの役目は済んでいますよ』と突きつけられると、男はアイデンティティを保てなくなって戸惑うんです」

 現場を離れて中間管理職となり、責任は重くなるが仕事は面白くない。そんな時期、サラリーマンが思秋期にはまり込む危険性が高まるのだ。

 仕事と並び、思秋期の要因として挙げられるのが、妻との関係だ。性依存症の治療に詳しい精神保健福祉士の斉藤章佳氏が語る。

「奥さんが閉経して性交渉がなくなったことがきっかけで、痴漢をしてしまう男性もいます。大体50代の方で、会社でもそれなりの地位があり、家族からも信頼されている方が多いので、『まさかあの人が』と同僚も奥さんもビックリする。真面目で風俗など行ったことがない、という男性に多いケースです」

酒を飲むと変身してしまう

 夫婦・家族問題コンサルタントの池内ひろ美氏がこんな実例を挙げる。

「大手都市銀行に勤める40代半ばの男性が、社内の女性更衣室を覗いて左遷されてしまった。奥さんとは見合い結婚で、勤務先も奥さんのお父さん(銀行員)の紹介でした。

 もともとご主人は無口なタイプで、家でもほとんど会話をしなかった。仲睦まじい家庭ではなかったが、奥さんは『あの人は真面目で浮気をするわけでもないし、給料だけ運んでくれればいい』と考えていた」

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