俺はいつの間にか痴漢になってしまったんだ。このままではマズいことになってしまう・・・・・・』
正直に打ち明けたことからもわかるように、ご主人は誠実で真面目な方。でももし、奥さんが問い詰めなかったら、いつか逮捕されていたでしょう」
50代の男を主人公にした『難しい年頃』という作品を書いた、作家の藤田宜永氏が語る。
「若いと言えば若いけど、本当に若いわけではない。仕事の面でも、先が見えているようで見えない。男の50代は、10代の思春期に負けず劣らず難しい年頃なんですよ。
性的にも弱ってくるんだけど、50代はそれを素直に打ち明けにくい。60代になれば『俺はバイアグラを飲んでるんだ』と気軽に言うこともできるが、50代だと『俺はまだ若いんだ』と意固地になってしまう」
かの阿久悠は『思秋期』の歌詞にこう書いた。
〈無邪気な春の語らいや はなやぐ夏のいたずらや 笑いころげたあれこれ 思う秋の日〉
人生の秋を迎えた男が、寂しくなって見知らぬ女性の身体に手を伸ばす---その代償として訪れるのは、冬よりもはるかに厳しい現実である。
「週刊現代」2012年12月22日・29日号より