2012.12.21

インチキがんワクチンはどうしてなくならないのか?
倫理なき日本の医師と品性なき厚労省の「犯罪」

上昌広(東京大学医科学研究所特任教授)

 だが、なかには一流の大学の医師がその開発にかかわっているというふれこみのものもあって、ネットでヒットした免疫療法などに、藁をもすがる思いの患者が飛びつくのは無理のないことかもしれない。問題は、これらのほとんどが、治療費が高額なことだ。数十万~数百万円の費用を要することも珍しくない。ところが、たいていの場合、効果はない。がん治療の世界では、「免疫療法は胡散臭い」とみる向きが多いのも当然だろう。

 先日、「NHKスペシャル」が、中村祐輔東大医科研教授(現・シカゴ大学教授)らが開発し、日本国内で、厚労省の認可の元に臨床研究を進めているがんペプチドワクチンの治験現場での取り組みを放送した(2012年11月18日)際、一部の医師や患者が「インチキ免疫療法を取り締まれ」と抗議の声を上げたのも理解できないことはない。

厚労省が法規制を強化すると・・・

 最近、このような世論に押された形で、厚労省がインチキ免疫療法の法規制を考え始めたという。医師などで作る専門の委員会で、がん免疫療法を対象に含めるか検討するらしい。

 このやり方、一見、患者のためになりそうだ。ところが、事態はそんなに簡単ではない。厚労省の権限を強めることで、がん患者が割を食う可能性がある。

 じつは、「インチキな免疫療法」と「正しい免疫療法」の線引きは難しい。

 たとえば、今や標準的医療行為となった骨髄移植は、臨床応用が始まった当初、胡散臭いと思われていた。

 それでなくても世論や政治の影響を受けやすい厚労省が「正しい治療」か「間違った治療」かを決めることに問題はないのだろうか。厚労省が、規範を振りかざして医療現場に介入してもろくなことがない。

 その一例として、混合診療への対応をご紹介しよう。

 日本では、国民皆保険制度のもと、保険診療と自由診療、そして混合診療というものがある。がん治療では、手術や抗がん剤、放射線治療など標準的な療法には保険が適用されるが、それ以外の療法の場合は、医師と患者が話し合って、自由診療の名の下に治療を行えることになっているが、保険は適用されない。

 混合診療とは、保険診療と自由診療を交えて治療することをいうのだが、原則的には混合診療は認められない(保険適用される治療もすべて患者が負担する)。

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