2012.12.21

インチキがんワクチンはどうしてなくならないのか?
倫理なき日本の医師と品性なき厚労省の「犯罪」

上昌広(東京大学医科学研究所特任教授)

 厚労省は2006年に健康保険法を改正し、厚労省が認可した施設では例外的に混合診療を行えるようにした。先進医療制度という。ただ、施設も治療法も限定されており、2012年11月現在、104の医療行為が承認されているにすぎない。

 がん免疫療法については「樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法」と「十二種類の腫瘍抗原ペプチドによるテーラーメイドのがんワクチン療法」が認定されているが、治療を行っているのは6施設と4施設だけだ。患者ニーズに対応できていないし、ただでさえ医師不足が深刻な医療現場に、資料づくりなどの膨大な時間と労力の負担を強いている。

 この制度が出来るまで、混合診療は日常的に行われていた。筆者も都内の一般病院に勤務していた際、進行がん患者に対し、未承認薬を個人輸入し、投与していた。医学的に有効性は証明され、数年後には我が国でも承認された。このことを知った患者のほとんどは、治療を受けたいと希望した。

 未承認薬の個人輸入手続きは煩雑だ。勤務医にとって金銭的なインセンティブはなく、手間のかかる仕事だ。しかし前述のとおり患者・家族からずいぶんと感謝される。ところが、先進医療制度が出来て以降、こんな面倒な作業をする医師は激減した。一般病院に勤務する友人の医師は「厚労省に目を着けられてもイヤだし、患者がよほど希望しない限り、やらなくなった」と言う。

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 また、厚労省は2011年から「臨床研究中核病院」の認定を始めた。目的は国際標準の臨床研究を実施する基盤整備で、年間33億円の予算措置がなされている(2011年度)。ところが、この制度も「お題目」とは異なる悪影響を現場に与えている。

 厚労省が、臨床研究中核病院に認定したのは、東大や京大などの大学病院、国立がん研究センターや国立循環器病センターなどの厚労省関連の病院がほとんどだ。がん、および循環器治療で日本一とされる癌研究会附属病院や榊原記念病院などの民間の専門医療機関は認定されていない。

 医療はサービス業だ。率直に申し上げれば、官より民間のシステムのほうがうまくいくし有利な点が多い。かつて、厚労省直轄の国立がん研究センターが「がん難民の産みの親」だと批判されたのをご記憶の方も多いだろう。さらに、高度医療では総合病院よりも専門病院の方が有利だ。

 ところが、厚労省が施設を認定するとなれば、これまで膨大な予算を注ぎ込んできた旧七帝大系(東大や京大など)の病院やナショナルセンターを外すことは出来ない。患者の評価よりも役所の都合が優先される。

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