2013.01.09

[プロ野球]
上田哲之「日本野球よ、理念を語れ!」

スポーツコミュニケーションズ

あるべきホームランの姿

 日本野球に戻ろう。東北楽天イーグルスは、本拠地・Kスタ宮城の両翼にラッキーゾーンを新設するそうだ。これまで両翼101.5メートルで、12球団の本拠地でもっともホームランが出にくいといわれた球場を、よりホームランが出やすくするのが狙いだという。たしかに、ホームランは野球の華である。球場で、ホームランになる打球の軌跡を、打者がバットでとらえた瞬間からスタンドに届くまで見届ける快感は、何物にも代えがたい。野球少年ならずとも、一生の記憶として脳裏に刻みこまれる経験である。

 だからといって、それは狭い球場と飛ぶボールによって安易にもたらされるべきものではないだろう。飛ばないとされる“統一球”の導入は、加藤良三現コミッショナーの英断だったというべきである。ほかの局面でのとかくの対応はさておき、少なくともこの件については、コミッショナーは理念を貫いたと評価していい(それが後戻りしないことを切に祈る)。Kスタ宮城は、本拠地球場としての昨季の本塁打数は38本で、12球団最低だったのだという。別に楽天の選手に限ることではないが、統一球で広い球場で、それでもホームランを打てる打撃技術を磨くべきである。それが、日本野球が強くなる、あるいはもう1ランクレベルアップする道だ。

 ホームランになる打球は、多くの場合、まず低い弾道で飛び出し、それからジェット機が離陸するように、急速に空に舞い上がっていくものである。この軌道が美しい。だからこそ、目で追うだけで快感を得られる。それにひきかえ、外野フライに終わる打球は、グイッと上昇するエネルギーに乏しい。高く舞い上がるけれども、そこから伸びるのではなく、失速する。後者の打球は、球場のサイズやボールの質の恩恵でホームランになるべきではない。この二種類の飛球の結果がはっきり分かれる試合環境こそ、あるべきプロ野球の姿である。

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