2013.02.02

高齢者は保険より貯金すべし! がんへの備えに本当に必要なものは何か
がん保険のカラクリ【第5回】 文/岩瀬大輔

「もちろん、医療保険は、がんも含め、さまざまな病気やけがを保障してくれます。 私も、がんと診断されるまで、クライアントには、『まずは、医療保険への加入を。その上で、〈がん家系〉などで、がんが心配なのであれば、別途、がん保険に加入してはいかがですか?』などとアドバイスしてきました。

 しかし、自分ががん患者となってみると、がん以外の病気であれば、多くの場合、保険の給付金をアテにしなくても、預貯金などで治療費をまかなえるのではないか?と考えるようになりました。実際に、私は15年ほど前に子宮筋腫で入院・手術をしていて、その時にもいくばくかの治療費を支払いましたが、もらった入院給付金と手術給付金の方が多くてラッキー!と喜んだ記憶があります。治療費は当時の預貯金でまかなえる範囲でした。

 それと比べて、治療費が高額化、長期化しやすい『がん』だからこそ、それに特化したがん保険に加入して備えておいた方が安心だと思うのです」(黒田前掲書)

 私が書いたことは、あくまで確率計算と論理に基づく提案である。これに対して、黒田氏は(このような提案をよく理解したうえで)実際に自らががんに罹った上での言葉を述べている。どちらもそれなりに説得力があると思うので、あとは読者にご判断頂きたい。

 いずれにせよ、保険を選ぶ際にもっとも大切なのは、「いくら払って、その代わりに何を保障してもらえるか」という算式である。高い確率で起こる事象を保障してもらうためには、その分保険料は高くつく。保険料を低く抑えようと思えば、その分保障範囲を限定しなければならない。その点において、「お得な保険」なんてものは存在しないのである。

 がんを始めとする病気に備える手段としては、保険はほんの一部であることを認識して、実際にがんに罹る確率やそのときの費用、どのようなリスクにいくら保険料を払ってどんな保障を受けたいのか、冷静に検討した上で保険加入を考えるべきなのである。

高齢者は保険よりも貯金を

 ここで注意すべきは、年齢が高くなるにつれて保険の機能は弱まっていくことである。先に述べているように、保険というのは発生確率が低い事象に備えるのに適したものである。

 とすれば、がんに対して保険で備えるという考えは、発生確率が比較的低い30代・40代のうちには成り立つが、60代・70代になると機能が弱くなっていく(これは、一般的な民間の生命保険についても同様だ)。

 そもそも、高齢になれば誰しも病気はするし、医療費はかかる。したがって、本来純粋な高齢者のための医療保険というのは成立しないはずなのだ。保険料が高くなってしまうか、給付が少なくなってしまう。保険会社側としては、若いうちから保険料をもらって積み立てていくか、高齢者の間で保険料を高くするか保障を小さくするかで、まかなわざるを得ない。それが公的健康保険において機能するのは、保険料で足りない分については税金の投入をすることや、保険料を給与比例で設定することで高所得者から低所得者へ、ないし現役世代から高齢者への所得移転を行っているからである。

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