アベノミクス第1の矢は放たれた! 黒田日銀が大胆な「量的・質的金融緩和」を打ち出し、今後の焦点はいよいよ"規制改革"に!

「黒田日銀」が4日、予想以上に大胆な金融緩和に踏み込んだ。日銀の発表後、信頼する市場関係者に電話して「サプライズですね」と言ったら、直ちに「ビッグ・サプライズです!」と言い返された。たしかにそうだ。
事前報道では「金融市場は日銀の金融緩和策を織り込んだ」と盛んに報じられていたので、私は内心「4日の株価は下がるぞ」とみていた。織り込んだからには「なあ~んだ」となるのが常だからだ。たまたま朝、電話をいただいた国会議員に「きょう日銀が金融緩和を決めますが、株価はたぶん下がりますよ」などと喋っていた。
これは、まったくの誤りだった。4日大引けの平均株価は前日比272円高の12,634円である。円も2円近く下落して、約2週間ぶりに1ドル=95円台の円安ドル高になった。申し訳ない。紙面を通じて、相手にお詫びする。
ただし、先の市場関係者も「おそらく下がる」とみていたし、電話相手の国会議員も「たしかに金融関係者に聞くと『そろそろ株高も限界です』と言ってますね」と半ば、同意していた。だからこそ、ビッグサプライズなのだ。
黒田日銀の「量的・質的金融緩和」
緩和の中身をみると、なんといっても驚いたのは2年後の日銀資産を現在(158兆円)の2倍近い290兆円にまで膨らませる、という点である。日銀は長期国債とかCP(コマーシャルペーパー)とか社債とか、いろいろなかたちで資産を保有しているが、中でも長期国債の割合が大きい。その長期国債は現在の89兆円から2014年末には190兆円と、こちらも2倍以上に拡大する。
そうした資産を買うことによって、市中に出回る日銀券を増やそうという政策である。日銀が市場調節する操作目標も、従来の無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベース、すなわち「日銀券+日銀当座預金+貨幣」に変更した。平たくいえば、短期金利の水準を目標にせず、市場に出す一万円札を増やす。いわゆる量的緩和政策である。
黒田日銀はこれを「量的・質的金融緩和」と呼んでいる。
白川方明総裁時代の日銀は「トゥーリトル・トゥーレイト」、つまり緩和と言っても、いつも小出しで対応が遅かった。黒田日銀はまったく逆だ。就任直後なのに、一挙に「2年後までに日銀資産を2倍にする」と宣言した。
コラム同僚筆者の高橋洋一・嘉悦大学教授があちこちで指摘してきたように、08年のリーマンショック後、米国の連邦準備制度理事会(FRB)や英国の中央銀行であるイングランド銀行は一挙にバランスシートを2~3倍に増やした。まさに黒田日銀も今回、同じようにバランスシートを拡大する正攻法を採用した。
これを見て思うのは、金融市場やメディア側も日銀の金融政策について今後、受け止め方を改めなければならないだろう、という点である。それはこういうことだ。白川日銀はいつも小出しだったから、金融政策決定会合が開かれるたびに「今度はどんな手を打ち出すのか」と待ち構え、その中身に一喜一憂を繰り返した。
言い換えれば、毎回、たとえ内容はつまらなくても、そこに「サムシング・ニュー」があった。だからニュース記事にもなった。ところが、今回は2年後の資産目標まで示してしまったのだから、もうこれから何も出てこなくても不思議ではない。