グーグルが導入した量子コンピュータとは何か

グーグルが先週、量子コンピュータを駆使してAI(人工知能)を研究する「量子AI研究所(Quantum Artificial Intelligence Lab)」を立ち上げた。今後、米航空宇宙局(NASA)などと協力し、量子コンピューティングで機械学習の技術などを研究開発するという。
量子コンピュータは、ミクロの世界を支配する量子物理学の基本原理に基づく画期的なコンピュータである。そのアイディアは元々、世界的に有名な物理学者であるリチャード・ファインマン氏(故人)が思いついたとされるが、その具体的な原理を提案したのは英オックスフォード大学のデビッド・ドイッチュ氏だ(1985年のことである)。
量子コンピュータの原理
量子コンピュータの原理を、従来のコンピュータとの比較で説明すると次のようになる。
一般にコンピュータでは、その内部状態を表現する各ビットが0か1かのいずれかを表す。そこではn個のビット列は、0と1の組み合わせ方に応じて全部で(2のn乗)個の状態を表すことができる。
さて従来のコンピュータでは、これら(2のn乗)個の状態のうち、ある時点でたった一つの状態をとり得る。この一つの状態が時々刻々と次の状態へと推移していく(コンピュータが計算を行うとはそういうことである)。
これに対し量子コンピュータでは、(2のn乗)個の状態のうち、ある時点で(ある確率分布に従って)全ての状態、つまり(2のn乗)個の状態をとり得る。そして各々の状態が時々刻々と次の状態へと推移していく。つまり量子コンピュータの内部では、(2のn乗)個の状態を同時並列的に計算できる。これは(2のn乗)個のコンピュータによる並列処理と同じことである。
最終的に答えを出力するときには、観測時における「波束(確率分布)の収束」と呼ばれる現象によって、(2のn乗)個の状態がたった一つの状態へと収束する。これが問題の解となる。以上のやり方は、「シュレディンガーの猫」と呼ばれる量子物理学のパラドックスを逆手にとったような方法だ。
