スクープ!「社長をクビにした理由」を本誌にぶちまけた!
東芝のサプライズ人事西田会長がその全内幕を明かす

「社内で会議ばかりやっている」
「英語がろくに話せない」
「利益を出しても日立には負けている」
候補者をリストアップし、何年もかけて見極めた。こいつしかいない。そう確信した後継者なのに、思わぬ方向へと走り出した。だから、人事は難しい。「選んだ側」はいま、こんな思いに悩んでいた。
彼のままでは会社が潰れる
「佐々木を社長に指名したのは僕です。選んだ僕に責任がある。そこは認めます。ただ、このままだと東芝の将来がとんでもないことになってしまうと思ったのも事実です。社長を新しい人にかえて、もう一度東芝の再生を図らないと、大変なことになってしまうと」(西田厚聰・東芝会長)
今年6月に東芝は新・経営陣で再スタートを切る。しかし、その新体制人事はサプライズが満載だったため、業界関係者は騒然となった。
まず一つ目のサプライズは、社長の佐々木則夫(63歳)の役目が、今後は財界活動中心になることにある。副会長職という新しい役職が作られそこに収まるのだが、要は経営の中枢から外された形なのだ。
またもう一つのサプライズが、会長である西田厚聰(69歳)が現職に残ること。過去の社長交代時には、会長は相談役へと退くのが通例だが、西田は新社長である田中久雄(62歳)をサポートするため会長職に留まるというわけだ。
今年2月の社長交代会見は、異様な雰囲気に包まれた。西田と佐々木は、互いを批判するような言葉を口にした。
「(新社長には)もう一度、東芝を成長軌道に乗せてほしい」(西田)
「成長軌道に乗せる私の役割は果たした」(佐々木)
公の場で会長と社長がこんな「すれちがい」を見せつけるのは異例のことだったため、メディアは二人の確執を書きたてた。
西田と佐々木—。二人はかつて「盟友」だった。世界中を驚かせる米大手原子力発電会社ウェスティングハウスの買収という一大プロジェクトを、二人三脚で成し遂げた仲。ともに親分肌として性格も似ている。西田が佐々木を後継指名する際には、一部から反対の声も上がったが、西田自らがOBらの説得に走ったほどである。
西田から佐々木へバトンが渡されたのは2009年のこと。二人は固く手を結び、「会長・西田晡社長・佐々木」体制で東芝をさらなる巨大企業へ飛躍させようと、胸躍らせたに違いない。
あれから4年—。売上高6兆円、従業員20万人。日本を代表する巨大企業で、何が起きているのか。二人の間に何があったのか。
西田を自宅で直撃すると、本誌の独占取材を受け入れた。冒頭の発言はその西田の言葉である。
「いろいろ報道されていますが、間違いも多い。誤解されていることもある。だから、私は事実を事実として説明します」
抜擢した部下を、自らの手でクビにした男が、サプライズ人事の全内幕を明かした。以下、西田の「独白」である。
※
佐々木体制のこの4年間は、僕が期待したようなものではありませんでした。彼は年度の初めに立てた売り上げ目標を一度も達成したことがありません。(2013年3月期の)決算も(昨秋に)2600億円の利益目標を掲げて、「やります、やります」と言っておきながら、結果は2000億円にも届かなかった。もう有言不実行ばかりを繰り返していて、反省がないのです。
確かにこの4年間は、利益は出ていますが、しかし売り上げはどんどん下がっている。売り上げが減っているのにどうして利益が出ているのかといえば、固定費のカットです。もちろんカットすべき無駄なコストはありますが、東芝の礎だったり、将来の成長の芽となる固定費もあります。それを4年間ずっと、削っていく。これでは将来の芽を摘んでいるも同然です。
自分のときにだけ利益が出ればいいんだという考えで経営をやってしまうと、縮小均衡に陥って、会社が潰れてしまいます。経営とは本来、次の社長に成果の果実を摘んでもらうためにやるものなのです。それが固定費のカットばかりをやっていたら、20万人の会社では、とても会社を動かせません。事業部長の仕事ではないんですから。
そもそも利益が出たといっても、ではライバルである日立さんよりも業績はいいのでしょうか。まったくダメです。僕は社長だった時代にうちの株価を日立さんよりも上にしましたが、再び逆転されて、いまは150円以上も離されてしまっているじゃないですか。うちはグローバルトップへの挑戦と言っていますが、国内でトップにも立てずにどうしてグローバルトップになれますか。「実績を残した」と言うならせめて、日立さんと拮抗するくらいの業績は出していないといけません。我々は競争をしているんです。比較しようともせずに「俺はやった」といっても、これでは意味がありません。