短期連載 早熟の才能は、どうすれば順調に育つのか「神童」たちの「その後」 小学生社長の中学受験

取材・文 太田あや(フリーライター)
様々なジャンルで突出した「スーパーキッズ」たちは、思春期を迎え、「神童」と呼べなくなるほど成長した今、自分の才能、そして支える親とどう向き合っているのか。小学生時代に取材したライターが、再び彼らに会いにいった—。
「この子は将来、世界を動かす人物になるかもしれない。えらい子を授かってしまった。初めてそんな風に感じたのは、維斗が4歳の頃でした」
中学2年生になった米山維斗くん(14)の母・ななさん(45)には忘れられない光景がある。4歳の維斗くんが友人とゲームをしようとしたときのこと。遊ぼうにもサイコロがない。すると、維斗くんは紙に展開図を書き、あっという間にサイコロを組み立ててしまったのだ。
「対面の数字の和が7になるのは、図鑑を読んで知っていましたから」
そんな維斗くんの言葉は、さも当然といった感じで力んだところはない。1歳の終わりには両親との会話が成立し、3歳になる前にひらがな、カタカナ、パソコンの操作をマスターし、興味を持ったことは図鑑を読み漁り、ネットで調べ尽くした。4歳になると、通っていたインターナショナル幼稚園で太陽系に関する授業を受け、瞬く間に惑星に魅せられた。
「太陽は水素で燃えているんだよ」
父・康さん(49)やななさんに、熱に浮かされたように惑星について話し続け、康さんは、息子の興味の?を摘み取ってはいけないと、専門的な図鑑や雑誌を買い与え、ななさんは、内容が高度で理解できなくても、懸命に耳を傾けた。
そして、「同年齢の子とは確実に違う子」(ななさん)だった維斗くんは、小学6年生になると、会社を起こし、日本初の小学生社長となった—。
すごい集中力、すごい強情
'11年7月20日、維斗くんは、横浜地方法務局に自ら赴き、「ケミストリー・クエスト株式会社」の設立登記をした。法律上16歳までは代表権を持てないため、康さんが代表取締役に、維斗くんは取締役社長に就任した。主たる事業内容は、維斗くんが開発したカードゲーム「ケミストリークエスト」(以下「ケミクエ」)の販売だ。48枚の元素記号のカードを組み合わせ、対戦相手より分子を多く作れば勝ちという、遊びながら化学結合が学べる対戦型ゲームである。