
「巨大な工場を建ててモノ造りをしてきた大企業が大赤字を出す時代となった。この傾向は益々強まるだろう。過去の成功体験に縛られた大企業は、よほどの工夫をしないと生き残れない。
マニュアルに従ったことしかできないサラリーマンも、機械・ロボットに仕事を奪われる。会議や報告しかできない中間管理職は消える。すでに米国では起きていることだ」(技術経営に詳しいテクノ・インテグレーション代表の出川通氏)
これから始まる7年間は、まさに激動の時代の幕開け。超人口減少社会の到来、ロボット化の進展、新・新興国の台頭といった激変に、産業界やわれわれの生活が大きく巻き込まれていく。
そうした中で、確実に生き残っているといえる日本企業はどこか、日本からなくなってしまう可能性のある仕事はなにか。本誌は経済・産業を熟知したプロに緊急アンケートを実施した。その結果をまとめたのが、表である(1~3ページに「生き残る会社」、4~5ページに「なくなる仕事」をまとめている)。

たった7年と甘く見ないほうがいい。たとえば過去7年に倒産した企業を振り返ると、英会話のノヴァ、米大手証券リーマン・ブラザーズ、大和生命保険、貸金業のSFCG、穴吹工務店、百貨店の丸井今井、日本振興銀行、JAL(日本航空)、武富士、ウィルコム、半導体大手のエルピーダメモリ……。誰もが潰れないと思っていたはずの大企業が、時代の変化に逆らえずにいとも簡単に倒れた。
スマートフォンの急速な普及でパソコン産業が壊滅的な大打撃を受けるとは、7年前に誰が想像しただろうか。数千億円規模の大赤字を出すまでに落ちたパナソニックが、'08年に「22年ぶりに過去最高益を更新」と沸いていたことを憶えている人はいるだろうか。
これから起こる変化は、過去の変化よりも急激かつスピードが速い。専門家たちはそう口を揃える。その激流の中で生き残っていける企業はどこなのか。

ダントツ!トヨタが強い「本当の理由」
アンケートでは、生き残ると思う企業を3社ずつ挙げてもらった。獲得票数でランキングすると、トップ10は次のようになった。
1位 トヨタ自動車(9票)
2位 三菱重工業、セブン-イレブン・ジャパン(6票)
4位 ソフトバンク(5票)
5位 日立製作所、ファナック(4票)
7位 コマツ、JR東日本、三菱商事(3票)
10位 クボタ、JT、武田薬品工業、東芝、東レ、ファーストリテイリング、富士重工業、本田技研工業、三菱地所、三菱UFJFG、ユニ・チャーム(2票)
コンサル大手マッキンゼーを経て米カーギルに入社、現在は明治大学国際日本学部教授の小笠原泰氏は、「トヨタは業界1位なので当たり前と思うかもしれないが、今後は業界1位、2位といったものは通用しなくなる」と言う。

次々と新しい技術が開発される中で、手持ち技術が陳腐化する速度も早まっている。過去の成功体験にすがってばかりいれば、あっという間に後続企業に追い抜かれる時代だからである。
生き残りのポイントは業界順位などとは関係なく、「どのようなアイデンティティを持つ企業になるかを明確にしているかどうか」(小笠原氏)。トヨタは日本から工場(生産拠点)をなくさないとの確固たる信念を持つ稀有な企業である。文字通り、日本発の日本企業として世界に伍して闘っていくというアイデンティティが明確なわけだ。