2013.08.13
# 雑誌

感動読み物 有名人が語った苦難こそ、人を作る【第2回】西山太吉「汚名を着せられた日々はムダではなかった」/野村克則「いま、やっと両親の気持ちがわかった」ほか

週刊現代 プロフィール

「自分の意思でこの世界に入ったわけですから、野球で結果を出すしかない。練習だけは人一倍やったつもりです」

 あれほど毛嫌いしたマスコミへの対応もやがて変わっていった。

「父からも『ときにはお前のほうから積極的に話しかけていくような姿勢が必要なんだ。決してふて腐れた態度をとるな』とアドバイスされました」

 ただ、母親についての報道には折り合いをつけることができなかった。サッチーこと母・沙知代は'01年に脱税容疑で逮捕される。

「母が逮捕されたことはテレビで初めて知りました。あれはこたえましたね。母がワイドショーに登場するたびに、気分が悪くなり、チャンネルを替えていました。母についての質問に答えても、面白おかしく書かれてしまう。『家族だから仕方ないな』と自分に言い聞かせるしかなかった」

 巨人の二軍バッテリーコーチを務めるいま、若手からの人望厚い兄貴分として知られている。

「自分なりにつらいことを経験したなかで、相手の立場や思い、痛みを考えられるようになりました。それがいまに生かされているのかもしれません」

 巨人、楽天を経て引退。生涯成績は打率1割8分5厘、ホームラン4本だった。ただ、数字以上に大きなものを得た。それは人との出会いだ。

「たとえば、古田さんのリードを見られたことは、いま僕のコーチ業の財産になっている。宮本さんや稲葉さん、同級生の石井一久など良きチームメイトにも恵まれた。4球団を渡り歩いたことも良かったと思う」

 父・克也がユニフォームを脱いだいま、「やっと両親の気持ちがわかった」と克則は言う。

「プロ入りして以来、僕にとって野村克也はずっと父ではなく監督でしたが、ようやく普通の親子の関係に戻りました。いまは父のおかげでここまでこられたと感謝しています。

 バッシングも受けましたが、両親は両親なりに息子の自分を愛してくれたことが、親になってわかります。なにがあっても家族であることに変わりはない。それが、僕が苦難の末に得た結論です」

帚木蓬生 作家・精神科医
白血病で入院、無菌室で本を書いた

 精神科医として臨床の現場に立ちながら、『閉鎖病棟』『インターセックス』などの作品を発表してきた作家・帚木蓬生(66歳)は、'08年に白血病を発症した。

関連記事