ドイツ・再生可能エネルギー法の失敗と、日本が模索すべき最良の道

EU設立の目的は、ヨーロッパが一丸となって、アメリカやアジアに対抗することだった。しかし、現在のEUがその目的をうまく果たせているかというと、どうも心もとない。EUは肥大し、そのために、内部の意見を一致させるために膨大なエネルギーを費やさなくてはいけなくなってしまった。しかも、官僚政治の深い藪の中に迷い込んでいる。
7月27日、EUと中国は、もめにもめていた太陽光パネルの価格をめぐる争いに、一応の終止符を打った。
中国製の太陽光パネルは、EU市場で膨大なシェアを誇り、2011年には、その売り上げは210億ユーロを超えた。しかも、その価格が中国での生産価格を割っているというから、もちろんEUのメーカーは太刀打ちできない。なぜ、中国メーカーにそんな芸当ができるかというと、中国政府が国策として、この業界にかなりの援助をしているからである。
二重の追い風に煽られて急成長を遂げた中国メーカー
元々、ドイツの太陽光パネルメーカーは、日本と並んで世界1,2の技術とシェアを誇っていた。ところが今では、売り上げは中国のメーカーがずば抜けてトップで、世界の半分以上を占めている。中国が一番食い込んでいるのがドイツ市場で、そのため、ここ数年、ドイツのメーカーは、相次いで倒産するか、あるいはこの分野から撤退してしまった。つまり、抜き差しならない状況が続いているわけだ。
ドイツには再生可能エネルギー法という法律があり、自然エネルギー由来の電気は、所轄の電力会社が20年間にわたって、固定価格で全量を買い取ってくれる。
この法律の前身はすでに90年代の前半に整っていたが、太陽光パネルの需要が、法の改正で勢いづいたのは2004年のことだ。初めのうちは、設備投資に対する援助まであったため、ドイツの屋根には続々とパネルが取り付けられ、また、広い敷地と資金を持つ人は、メガソーラーパークを建設したのだった。現在、ドイツの太陽光発電量は世界一で、当然のことながら、パネルの需要も世界一だ。世界のパネルの半分が、ドイツで取り付けられている。
そして、このブームに入り込んで来たのが、中国製の格安パネルだった。2008年にはまだ20%だった中国製パネルのシェアは、2011年には、すでに60%を超えた。そして、ドイツ製パネルのシェアは、たったの15%に追いやられている。
太陽光パネルが増えれば増えるほど、助成金の総額も増える。問題は、この助成金を負担したのが国庫ではなく、電力会社だったことだ。電力会社は、自分たちの利益を削ってまで助成金を捻出するわけはなく、当然、電気代に上乗せする。つまり、太陽光パネルの助成金は、国民の支払う電気代で賄われているのだ。
また、ヨーロッパの電気は自由市場で取引されているので、太陽が良く照る日は生産量が増え、電気の値が崩れる。しかし、再生可能エネルギー法によれば、生産された電気の全量は、市場の値段に関係なく固定価格で買い取られなくてはいけないため、補てんに費やされる助成金は、さらに増えることになる。
こうして、2004年に36億ユーロであった全量買取りの総額(太陽光だけでなくすべての自然エネルギーを含む)は、11年には167億ユーロを超えるに至った。当然のことながら、将来の電気代高騰への市民の不安、および、反発も強くなった。
このままでは買取り制度は成り立たないということで、今では新規契約の買取り価格はずいぶん下げられている。しかし、以前に契約した分の買取り価格を下げるわけにはいかないので、これから少なくとも10年ぐらいは、助成金の総額は、増えることはあっても減ることはない。
この全量固定価格買取り制度で一番利益を得たのは、中国だと言われている。中国のパネルメーカーは、自国からの援助と、ドイツの助成金によるブームという、二重の追い風に煽られて急成長を遂げたわけである。その代わりに、ドイツのメーカーがどんどん押され、潰されていったのだ。