増税にYESといわない安倍首相は正しい!消費税増税なら2014年はマイナス成長になる
本コラムで2年ほど前の東日本大震災後に、「ホップが復興、ステップが社会保障、ジャンプが財政再建という三段階大増税が進行中だ。」と書いた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9228)。民主党の菅直人政権が財務省に籠絡されて、復興増税を言い出した後、これを奇貨として財務省が「三段階増税プラン」を進めていたのだ。
いよいよ「ステップの社会保障増税」まであと一歩に迫ってきた。政権を失った野田政権を踏み台にして、昨年8月に消費税増税法案を国会で成立させたので、政府が増税凍結法案や増税見直し法案を秋の臨時国会に提出しない限り、来年4月から消費税増税になる。
安倍首相がこれまで判断の材料とすると明言していた2013年4-6月期GDP速報が、8月12日発表された。実質GDP伸び率(年率換算)2.6%であった。
これは事前予想より低いが、まずまずの高い伸びだ。ただし、1次速報であり、来月9日に発表される2次速報までは予断を許さない。
今のところ、2013年度の実質GDP成長率は2.8%というのが、政府、日銀、民間シンクタンクの共通した見通しだ。それで来年4月から消費税増税を実行すると、2014年度について政府は1.0%、日銀は1.3%、民間シンクタンクは0.6%と、それぞれ実質GDP成長率が低下すると考えられている。

これらの数字はちょっと精査する必要がある。いずれの機関も、2013年度は消費税増税の駆け込み需要0.7%程度があり数字がカサ上げされ、2014年度はその反動で0.7%程度下がるとみているのは同じだ。
筆者の見通しでは増税ならマイナス成長
2014年度で違いが出ているのは、消費税増税の実体経済への影響だ。政府では▲0.4%、日銀は▲0.1%、民間シンクタンクは▲0.8%だ。
政府と日銀は、消費税増税に伴う政府支出増も織り込んでいるのに対し、民間シンクタンクではその織り込みが少ないか、なしとしているようである。
消費税率3%分はGDP比で1.5%程度。民間シンクタンクではそれに消費性向(0.5程度)を乗じて消費へのマイナス効果を見ているようだ。政府や日銀では政府支出増をそれに加えて、実体経済への落ち込みを少なくしているようだ。
消費税を巻き上げておいて、それを国民にバラマキ、経済の落ち込みを少なくするというのは、かなり馬鹿げた話だ。そうであれば、増税はないほうがいい。賢いとはいえない政府が国民から巻き上げて、うまく使うというのは、民主党時代に主張されたが、そのようなことはあり得ない。であれば、少なくとも政府よりは賢い国民にカネの使い道の選択を委ねたほうがいい。
なお、筆者は、消費税増税の実体経済への影響を▲1.5%くらいに見ている。というのは、7月29日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36556)で、欧州の消費税増税のデータを示した。それは、消費税増税の駆け込み需要増で増税前年は+0.3%、増税時は反動で▲0.3%、消費税増税の実体経済への悪影響で▲0.8%と読める。
2000年以降の欧州の消費税増税の38回をとったわけだが、その税率引き上げは1~2%が大半である。これを日本の3%引き上げに単純に当てはめれば、増税前の駆け込み需要増+0.6%、増税時の反動▲0.6%、消費税増税の実体経済への悪影響▲1.6%となっていい。
というわけで、増税時の反動▲0.7%で政府、日銀、民間シンクタンクと同じすれば、消費税増税の実体経済への悪影響▲1.5%で何の不思議でもない。つまり、筆者の見通しは、2013年度2.8%、2014年度▲0.1%だ。
税を経済政策として使うときの原則は、景気の悪いときは減税、良くなって冷や水をかけるときは増税であり、今は増税のときでない。アベノミクスの効果は2年ほどで本格的に出るので、来年4月はまだその前だ。そのときに増税したら、離陸直後に逆噴射をした飛行機のように墜落もありえる。筆者の2014年度の見通しはマイナス成長なので墜落だ。