犯人をデッチ上げるのは簡単です
大阪府警の「誤認逮捕」被害者男性の告白
1ヵ月に4件。それはあまりに多すぎる。犯罪が起きれば、誰でもいいから逮捕しようと誤認逮捕を繰り返す。そんな警察はもはや市民の味方ではない。ある日突然、逮捕された男性の「闘いの記録」。
刑事は突然やってくる
ある日の早朝、自宅のインターフォンが鳴る。誰だろうといぶかりながらドアを開けると、そこにはいかつい風貌の男たちが数人、立っている。
「警察です。署まで同行願えますか」
男たちは刑事。わけもわからぬまま警察署についていくと、取調室に押し込められ、こうすごまれる。
「お前がやったんだろ。わかってるんだ」
身に覚えがないといくら否定しても、刑事は聞く耳をもたない。
「お前を逮捕する」
腕に冷たい金属の感触。手錠と腰縄をつけられ、容疑者として、留置場に連行される—。
ドラマか小説の中だけの話と思うかもしれないが、これは現実に起きた出来事である。大阪府警の「誤認逮捕」で85日間にわたって身体の自由を奪われた男性会社員Aさん(42歳)は、その恐怖とやるせない怒りをこう語る。
「逮捕されてから、『○○!○○!』と若い刑事から何度も呼び捨てにされ、屈辱的でした。刑事から、
『あなたの汚れた手で、子供の頭を撫でられるんですか?』
とか、
『あなたは普通じゃないんですよ』
などとも言われました。本当に辛かった」
他人事ではない。誤認逮捕は明日、あなたの身に降りかかってもおかしくないのだ。悲劇の始まりは、今年1月下旬、大阪府警北堺署にもたらされた一本の電話だった。
「盗まれたガソリン給油カードが使われた」
その10日ほど前、堺市北区のコインパーキングに駐車中の車から、クレジット式の給油カードが盗まれていた。その被害者からの通報だった。
カードが使われたのは同市西区にあるセルフ式ガソリンスタンド。北堺署は「直轄警察隊」と呼ばれる捜査員を現場に派遣した。
スタンドの販売記録から、1月13日の午前5時39分に、道路からいちばん近い第1給油機で、盗まれたカードが使用されていたことがわかる。犯行の「場所と時刻」が特定された。
捜査員がスタンドの防犯カメラを確認すると、犯行時刻の前後に給油した車が2台あることがわかった。
防犯カメラ上の時刻は5時42分と48分。捜査員は42分に給油した人物が犯人だと断定。同じくカメラに映っていた車のナンバーから持ち主のAさんを割り出し、4月24日、給油カードの窃盗容疑で逮捕したのだった。
完全に否認を続けるAさんを、府警は「ガソリンを盗んだ罪」で再逮捕。6月4日に大阪地検がガソリン窃盗容疑で起訴した。