いちばんいいのは、やはり転職せず、今いる会社の中で認められてえらくなること。えらくなるというのは、すなわち権限が増して、それに見合った報酬が得られることです。権限が増すと仕事は楽しくなりますし、やりがいも生まれます。自分が慣れ親しんだ職場ほうが、それが実現する可能性は高いでしょう。
――とはいっても、「今の会社ではなかなか目が出ない」とか「今の自分は不遇をかこっている」との不満から、転職を考えている人も多いのではないでしょうか。
塩野 もちろん、自分の置かれた境遇に思い悩んで身も心も壊してしまうぐらいでしたら、できるだけ若い時期にリスクをとる、つまり転職をおすすめします。一回転職してみると、転職することでスーパーハッピーになれる保証なんてどこにもないことや、転職先の新しい環境でまたゼロから信頼を得ることの大変さを身をもって経験できるからです。転職によって、今の会社が全てではないこと、今は不遇でも人生においてはそれが別に大した問題ではないことや、「人生の終わり」でもないことを知ることもできます。
しょせん「たかが仕事」であって、「いろんなことは大したことがない」ということを知ることができるという点において、転職には意味があります。ちなみに、新卒で入社した会社の名前を転職で売りにするためには、「賞味期限がある」ということも肝に銘じておいたほうがいいです。新卒から時が経つほど、採用側から前職の名前より本当の実力を評価されてハードルが上がることになるからです。また、今後の経済情勢を考えれば未来永劫続く会社はないのですから、転職することを決めたら、事実上の年齢制限である35歳以下をクリアしている若いうちの方が転職しやすいのも事実なのです。
第一印象が採否の8割を決めているのに…
――その他、本書では就活前に知っておきたい情報だけでなく、実際に入社してからの悩みや疑問、たとえば同期よりも出世が遅い時の心の持ちようですとか、上司などから不正に加担するよう指示された時やリストラの候補にされた時の対処法、会社を円満退職するコツについても言及しています。
塩野 いつどういうふうに辞表を出せば、波風立てずに会社を辞めることができるのか。転職先を伝えるタイミングやそのコツなど、働き始めてから長い会社人生の中で起こりうるイベント、リアルな事柄についてできる限り触れたつもりです。