プロ野球特別読み物 小笠原道大よ、谷佳知よ、最初から分かっていたはず 巨人にFAで入っても幸せにはなれないのだよ カネに転んで「故郷」を捨てた男たちの末路
FA宣言し、巨人入り。プロ野球ファンはこの光景を何度見てきただろうか。育ててくれた球団からの必死の慰留を断って、カネと勝利だけを求める。それでプロ野球選手は幸せになれるのか。
補強選手はただの「傭兵」
'02年に中日からFAで巨人へ移籍し、リリーフとして活躍した前田幸長(43歳)が言う。
「僕はロッテ、中日、巨人と渡り歩きましたが、巨人の年俸は破格だった。FA宣言したとき、中日は慰留してくれたんですが、提示した金額は巨人と大きく開きがあった。だから僕は移籍を決意したんです。カネに転んだといわれれば、そうかもしれない。しかしプロ野球選手にとって、年俸こそが自分の評価指標であることもわかってほしい」
だが、後に詳述するが、前田の野球人生にとって巨人入りが幸福だったかと言えば、答えは「ノー」だろう。
小笠原道大と谷佳知。球界を代表する二人のスター選手が、今年も巨人をお払い箱になった。
ある日ハム球団関係者が言う。
「もし巨人に移籍せず日ハムに残っていたなら……そう思わずにはいられません。鋭い眼光で相手投手を睨みつけ、豪快なフルスイングで打球をスタンドへ運ぶ。小笠原には華がありました。今季現役を退いた広島の前田智徳や阪神の桧山進次郎のように、日ハムに居続ければ、彼は間違いなく球団のレジェンドになれる選手だった。引退する場合は間違いなくセレモニーを開いたし、現役続行にこだわるにしても、本人が納得いくまで一軍に置いたでしょう」
「ガッツ」の愛称で親しまれ、一昨年には2000本安打も達成した大打者は、自由契約にこそなっていないが、来季の構想から外れている。失意のガッツを見るにつけ、思い出されるのは、7年前の会見で目を輝かせて語った次の言葉だ。
「優勝するために君が必要だという原監督の言葉を意気に感じ、移籍を決めた」
もちろんの破格の年俸も提示された(4年15億2千万円)。だがそれだけではない。ガッツは「巨人の一員」となることに、大きな夢を抱いていたのだ。
しかし悲しいかな、巨人にとって小笠原はあくまで「傭兵」にすぎなかった。
巨人の球団関係者は「それがうちのやり方だから」と冷ややかだ。