2014.01.06
# 雑誌

特別読み物 サラリーマンにもなれない!? はじめての「就活」元プロスポーツ選手 現実は厳しい

元西武・高木大成、元楽天・福盛和男、元マリノス・阿部祐大朗ほか
週刊現代 プロフィール

連日企業へ会社説明会を聞きに行く学生と同じように、高木も戦力外通告を受けたその日から西武OBや恩師に話を聞きに行った。

「大げさでなく、ありとあらゆるところに相談に行きました。でも結局、誰かに聞いても答えが出るわけじゃないんですよね。自分の人生は自分で決めるしかない。私が出した結論は、球団職員になり、育ててもらった西武に恩返しをするというものでした。

当時から選手のセカンドキャリアは問題視されていました。だからこそ、私のようなプロ経験者がフロントにいれば、一つの道を示せると思ったんです。ただ不安は相当ありました。なにせそれまで、名刺は持ったことがない、社用電話に出たこともない、キーボードなんて触ったこともない、という状態でしたからね。30歳を過ぎた男が、初めてのことだらけのサラリーマンになるのは、並大抵のことではなかった」

それでも、約6年間、高木は職員としてがむしゃらに働き、手応えをつかみ始めていた。しかし一昨年、サラリーマンゆえの苦難に直面する。突如プリンスホテルへの異動が言い渡されたのだ。

「冗談でしょ、という気持ちでした。細かい理由は通告されなくて、いいから行って来いと。

ホテルでの役職はマネージャー。一般企業で言えば、課長でしょうか。担当は企画広報。プロモーションや催事関係などの業務を行っています。置かれた場所で咲く、それもサラリーマンですよね」

予期せぬ人事に驚きながら、高木はいま、懸命にホテルマンとしての業務に取り組んでいる。

「私の入れ歯はどこじゃ」

「はい、ここにありますよ」

つくば市にあるデイサービス桑林で、老人とそんな会話をしているのは、元巨人の財前貴男(27歳)だ。

'11年に育成ドラフト5位で巨人へ入団。しかしケガに泣かされ、一軍での出場経験を得られないまま、'12年に戦力外通告を受けた。

その財前はいま、このデイサービスでヘルパー見習いとして働いている。

「いままであまり勉強してこなかったので、机に座って教えられるよりは、自分で実践して覚えていくほうが性に合っています。ただ、野球と介護では全く勝手が違いますけどね」

財前がケアしているのは、車いすや寝たきりの老人およそ30人。風呂やトイレの介助、おむつの交換などが主な仕事だ。

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