2013.12.21

【文部科学 その3】 ITを教育に活かし、伝える力、創造性に富む日本人の育成を!

〔PHOTO〕gettyimages

TSUTAYAに市営図書館の運営を民間委託して公設民営の成功事例を作った佐賀県武雄市の樋渡市長は、教育現場へのIT導入にも積極的だ。武雄市では、2014年4月から小学生全員に、15年春には中学生全員にiPadなどのタブレット端末を配る計画を立てている。

2011年から佐賀県では、電子黒板などのIT教材の配備を進めており、武雄市では、さらに実験的に2つの小学校でiPadを使った事業を既に行っている。その結果、子どもたちを対象にした調査で「授業が分かりやすくなった」と応えた生徒が約8割となるなど、成果をあげている。

武雄市の公立学校におけるIT教材は、「電子黒板」が小中学校の学級数に対して約50%、2013年度末には80%まで整備する予定。「デジタル教科書」は、国語、算数、理科、英語などで小中学校の教師用に導入されている。タブレッットに関しては、小学校2校(4~6年生)で1人1台ずつiPadを導入しており、そのコンテンツはドリル学習アプリ、学習内容定着確認アプリ、電子黒板とiPadの連携アプリなどだという。

教育現場にITを活用することで、学校現場で出来る教育内容が変わってくる。この動きを日本全国に拡げて、子どもたちへの教育の質を是非とも向上させたい。

1. 全ての生徒にタブレット端末を配布し「反転授業」を導入せよ!

武雄市の例のように、教育にITを取り入れるメリットはたくさんある。まず、情報量の多い電子黒板や電子教科書を使い、タブレットで教育アプリを使うことによって、子どもたちは先生ごとのスキルに左右されにくい最良の「わかりやすい」授業を受けることができる。

また、ITを導入することで、校務に忙殺されている学校の先生たちの負担を軽減することが可能だ。さらには、塾・予備校が産業として定着している日本では、授業動画配信が発達しており、生徒にタブレットを持たせれば、「今でしょ!」で人気の林先生の授業を日本の高校生全員が自宅で受けることも可能だ。

これはあくまで例え話で、筆者は林先生の授業を受けたことがないので、そのレベルは存じ上げないが、ITを教育現場に導入すれば、質の高い授業が動画配信でどこでも受けることが可能であることは事実だ。

ITの教育現場への導入で是非とも実現したいのが、「反転授業」だ。全ての生徒にタブレット端末を配布し、基本的な授業は自宅で動画で見て、応用を教室で行うのだ。これは武雄市でも導入する計画のものだが、もともと近年アメリカの小中高校で広がってきた教育スタイルだ。

普通の授業は、「学校の教室で授業を受け、家で復習や宿題を行う」が、「反転授業」では、「授業そのものは家で動画で視聴し、教室では他の生徒や教師と一緒に分からなかった箇所の復習や応用問題に取り組む」というスタイルとなる。これまでとは反対に「授業を受ける」こと自体が宿題になるため、「反転授業」(Flip teaching、Flipped classroom)と呼ばれる。

反転授業では、生徒は授業の動画ファイル(授業ビデオ)を入れたタブレット端末を持ち帰って、自宅でその動画を視聴する。授業ビデオは、その分野の専門家や人気講師、スポーツ選手や文化人などの著名人に出演を依頼して撮影することが可能だから、この手法によって、人気講師や著名人、専門家による授業を全ての生徒が受けることが可能となり、授業の質はそれ自体で上がる。

さらに、教室では授業ビデオでわからなかった点を教え合いながら、応用問題などを解くことで、従来の詰め込み教育ではなく他人とコミュニケーションをとりながら協同して授業を進めることができる。これによって、「生徒の知識習得効率が向上する」「生徒の理解度の把握が容易となり、落ちこぼれを防止できる」「授業の中で他人と話し合うことが増え、コミュニケーション能力が習得できる」といったメリットがでてくる。

アメリカでも、反転教育の導入によって、高校での落第率の劇的な低下や生徒の学習評価の向上などの研究成果も出ており、是非とも日本でも小中高校に反転教育を本格的に導入したい。

そのためには、日本全国の全ての生徒にタブレットを配布する必要がある。武雄市は市内の全ての生徒にタブレット端末を配布する計画だが、市の人口は5万人、小中学校の数も16校と少ない。一方で、日本全国でみると、小学生が689万人、中学生が357万人、高校生が334万人であり、莫大な予算が必要かにみえる。

タブレットを日本全国の高校生までの全ての生徒たちに配るとしよう。今、アップルのiPadは高価格戦略で6万円以上するが、アマゾンのKindleは1万円代から購入可能だ。「超」がつく程の大量購入によるバーゲニングパワーで1台1万円と計算すれば、児童手当のたった1ヵ月分だ(現在、児童手当は、3歳まで毎月15,000円。中学卒業まで毎月1万円が支給されている。所得制限:年収960万円)

総額では小学生が689万人、中学生が357万人、高校生が334万人だから、約1,400億円と高額に見えるが、耐用年数を3年とすれば、年ごとの必要予算は、約450億円。なにより、児童手当の小学1年の最初のたった1か月分だけを教材費用として自動徴収するだけで日本全国の全ての生徒へのタブレット支給が可能となるのだ(その後タブレット端末の更新のたびに、児童手当を1ヵ月分徴収すればよい)

是非とも全生徒へのタブレット端末支給を実現して反転教育を導入し、学校現場における教育の質的改善を図って欲しい。

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