2014.02.13

『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー第2弾
最高裁中枢を知る元エリート裁判官はなぜ司法に〝絶望〟したのか?

「私が裁判官を辞めた理由」
『絶望の裁判所』著者 瀬木比呂志氏(明治大学法科大学院専任教授)

 2月18日に現代新書より、裁判官たちの精神の荒廃と堕落を描いた『絶望の裁判所』が刊行される。発売を記念して、1月28日現代ビジネスに著者である瀬木比呂志氏のインタビュー記事を公開したところ、直後より反響が相次ぎ、予約段階にも関わらずAmazonに注文が殺到した。法曹界のみならず、一般の人々の司法に対する関心が窺える。外部には知られることのない「法服の王国」で、現在何が起きているのか。最高裁中枢の暗部を知る元裁判官 瀬木比呂志氏(明治大学法科大学院専任教授)に再度インタビューを行った。

予約段階にもかかわらず早くもインターネット上で話題に。⇒本を購入する(AMAZON)

--先日のインタビュー記事公開直後、予約段階であるにもかかわらず注文が相次ぎ、Amazonの「本」総合売上ランキングで、一時は本書が70位台になりました。人々の本書に対する関心が非常に高いことが読み取れますが、このあたりをどのように自己分析されますか?

瀬木:法律家の世界については、僕の場合、弁護士を中心に、学者なども含め、常に興味をもって下さっている固定読者が一定数ありますので、その人たちが核になったということは、あるのかもしれません。ただ、それだけでは、先のような順位はありえないでしょうね。一般読者が興味をもって下さったということでしょうから、うれしいと思います。

--好意的な反応が多いのですが、一部には、「かつて所属していた組織について、問題はあるにせよ批判するのはどうか」という反応もありました。このような反応についてどのようにお考えになりますか?

瀬木:そうですね。そういう考え方もあるだろうと思います。
 しかし、そのような考え方、感じ方については、僕は、あとがきに引用したボブ・ディランの言葉で間接的に答えたつもりです。
「つまり我々の誰からも声が上がらなかったら、何も起こらず、〔人々の〕期待を裏切る結果になってしまう。特に問題なのは、権力を持った者の沈黙による『裏切り』。彼らは、何が実際起きているかを見ることさえ拒否している」というものです。
 裁判所と裁判官の抱えるさまざまな問題について、重層的、構造的な分析を行うには、裁判官としての経験と学者の視点の双方、また社会科学一般に関する一定の素養も必要ですが、そうしたいくつかの条件を満足する人間は、おそらく、僕のほかにはあまりいないでしょう。そうであれば、「所属していた組織を批判すべきではない」という倫理観と、ディランのいう「沈黙によって人々を裏切るべきではない」という倫理観の、どちらを優先すべきかという問題になります。僕は、一人の学者として、後者を優先すべきだと思っています。