2014.04.19

日本人が忘れた大切なものを
ジョブズやジャック・ドーシーは見据えていた

『デジタル・ワビサビのすすめ』著者・たくき よしみつインタビュー(後篇)
たくき よしみつ

ワビサビ精神を忘れたから日本のビジネスはじり貧になった

──「ワビサビ」がアートの世界だけじゃなくて、ビジネスチャンスの話にもつながるというのも興味深いですね。スティーブ・ジョブズとジャック・ドーシーという、現代のデジタル世界を築いてきたカリスマの名前も出てきますが……。

たくき:実はジョブズやドーシーがワビサビに傾倒していたということを、つい最近まで知らなかったんですよ。を一旦書き上げて、何度も書き直しているときに知りました。びっくりしましたね。あまりにもこの本のテーマと一致していたので。

 特にドーシーのワビサビへの傾倒ぶりはすごいですね。彼はツイッターの創始者として知られていますが、今はスマホをクレジットカード決済機にしてしまうsquareというサービスを提供する会社のCEOとしてのほうが話題に上ることが多いようです。で、squareの新入社員にワビサビの本を配って読ませているらしいんですね。まさに「デジタル・ワビサビ」でしょ。

 ジョブズやドーシーが見据えていたワビサビの精神を、本家であるはずの日本は見失ってしまっている。だからこそ本来得意中の得意であったはずの小型精密機械製造のようなビジネスの分野でも敗走し続けている、というようなことも書きました。

──すみません。ワビサビがなくなったから日本のビジネスも衰退したというのは、なんだかこじつけのようにも聞こえるんですが、もう少し具体的に教えてください。

たくき:例えば、日本で経済の話をするときって、どうしたら売れるか、どうしたら儲かるか、どこそこの株価はどう動くかといった話に終始していますよね。銀行や広告代理店のシンクタンク、なんとか総研みたいなのが出てきて、今後はこうなっていくでしょうみたいな分析をしてみせる。でも、それって全部受け身、もしくは第三者として観察しているだけで、主体になる意志、こうしたい、これが面白いからこれをやるという決意や哲学が全然ないんですよ。

 最近、ネットでちょっと話題になっていたので「マイルドヤンキー」という言葉を知りました。博報堂ブランドデザイン若者研究所というところの人が言い出したらしいんですが、ザックリ言えば、今僕が住んでいる日光市みたいな地方都市や首都圏周辺に住む若者世代の中で多数派になりつつある新保守層、というようなことらしいですね。