2014.04.19

日本人が忘れた大切なものを
ジョブズやジャック・ドーシーは見据えていた

『デジタル・ワビサビのすすめ』著者・たくき よしみつインタビュー(後篇)
たくき よしみつ

 子供のときから続く地元の人間関係や、車を使って地元で買い物もレジャーも済ませる。概ね低学歴低収入で、できちゃった婚をして、親への依存度が高い、というような層。……で、そのマイルドヤンキーがなんなんだといえば、まだ企業が強く意識していない消費者層だけど、それなりにターゲットになりえるとか、そういう目線で論じているわけですね。低収入とはいえ、夫婦共働きで、親のそばにいるからそこそこ金もある。遠出したり、野心を持って上京するなんてことがない分、地元消費型の楽しみには貪欲。できちゃった婚で子供もいるから、子供のためにも金を使わざるを得ない。だから、企業はそういう若年新保守層をターゲットにした戦略にも力を入れるべきだとかなんだとか、そういう話になってる。

 ……なんだそれ、と思うわけです。

──と言いますと?

たくき:上昇志向がない若年保守層をターゲットにした消費戦略ってなんなんですか。それこそ夢も希望もない。魂がない。こうしたい、これがやりたい、これが面白い、少数派であっても、俺はこれが好きなんだから、とことんこれを追求するぞ、みたいな精神がどこにもない。そんなんだから日本からは世界的なヒット商品が出ないんですよ。

 今の日本はファックスやウォークマンやデジカメを生み出した日本ではなくなっています。技術大国なんてもてはやされたのは昔のことで、今や、小型精密機器の代表であるスマホでさえ、世界のシェアにはまったく食い込めない。惨憺たる状況じゃないですか。

──そのこととワビサビが関係あるんですか?

たくき:大ありです。スティーブ・ジョブズは、コンピュータは性能がよくて安ければいいとは考えなかった。それを使って何を創り出せるか、何かを創り出したいと人々が刺激されることが大切なんだと考えてMacやiPadを世に送り出しました。それが彼のワビサビ美学です。

 ジャック・ドーシーは、今ではツイッターの創始者としてより、スマホがクレジットカード決済端末に早変わりするというサービス、SquareのCEOとして有名になってますが、Squareのアイデアというのは、友人のガラス工芸作家が、フリーマーケットみたいなところで展示していた自分の作品を気に入って買おうという客が現れても、カードで支払えないから今はやめておこう、ってなってチャンスを逃すことが多いのが悔しいという話を聴いたことがきっかけなんですね。弱小店舗やフリマでもクレジット決済ができるようなサービスができないかと考えた結果生まれたのがスマホを決済機にしてしまえというアイデアなんだそうです。

 二人とも、どうすれば大きく儲かるかが先じゃなくて、こうすれば楽しいんじゃないかという、自分の心の声、魂の声に従ってビジネスを展開しているんですよ。そこが全然違う。