福島みずほ
「小沢さんって、スゴイんです」
聞き手 鈴木哲夫BS11キャスター・ジャーナリスト
同時に福島党首自身が大臣(消費者及び食品安全・少子化・男女共同参画担当相)になったことで「米軍基地」「自衛隊」「原発」など、党の根幹となる主張も閣内では埋没しがちだ。
社民党はこのまま与党として歩むのか、連立を離脱して独自路線を貫くのか。大臣としてではなく、党首としての考えを聞いた。―
――鳩山政権が誕生してちょうど半年です。この連立政権に社民党が入ったことについて、とかくマイナス面ばかりが取り沙汰されますが、当の党首としてはどうお考えですか。
福島 とんでもない。プラスの成果が断然多いですよ。昨年の衆院選で社民党が掲げた「いのちを大切にする政治」は、鳩山政権のスローガンにもなっていると言っていいでしょう。

というのも、自殺の問題はもとより、新政権になってクローズアップされてきた普天間問題、労働者派遣法の抜本改正、地球温暖化対策基本法などは、それぞれ"いのち"の問題として社民党が取り組み続けてきたことなのですから。
連立政権に加わるに当たって私が申し上げたのは、「社民党が新しい政権の品質保証役になる」。これがいままさに、実現しつつあるわけです。
―もっと評価されてもいいというわけですね。
福島 ある自民党の議員は「鳩山政権は連立政権だから強い」とボヤいたそうです。私、「もっとあちこちで、それを大きな声で言ってくれないかしら」と思うんです。
つまり、社民党が入っていることで多元的な見方ができるから、この政権は手強いのだとおっしゃっているわけでしょう。
それに社民党がいなかったら、民主党内には右から左までいろんな意見の人がいるんだから民主党内政局になりますよ。民主党が割れちゃう。社民党がいろいろ言ってあげているから、民主党はひとつにまとまっていられるんです。そういう意識をぜひ、持っていただきたいです。
―民主党に持っていてほしい?
福島 いえいえ、国民の皆さんに、です(笑)。
福島 社民党が政権に加わった成果として最も大きいのは、普天間基地の移設問題でしょう。鳩山総理が一度は年内決着と言いながらも、昨年12月に辺野古沿岸部への移設を強行決定できなかったのは、社民党が「反対」で頑張ったからです。
鳩山さんって、優しいんです
―福島さんはあのとき、「現行案どおりの辺野古移設を閣議決定するなら、重大な決意をしなければならない」と、連立離脱を示唆された。
福島 社民党がゴネたとか言われているようですが、そうではありません。普天間問題とはすなわち、民主主義の問題なんです。辺野古沿岸部への移設で既に日米合意がなされていたといっても、実現してこなかったのは、それが民意に沿っていなかったからにほかなりません。だから12月には、ここで早期決着するよりも、さらに議論を尽くすべきだと訴えたのです。
あのとき無理に決断していたら、鳩山総理は今よりももっと苦しい立場に追い込まれたはずです。「鳩山さんを救ったのは、あの福島さんの発言だった」と言ってくれた人もいます。
―確かに、より議論されることになりましたが、いよいよ最終決定がなされる5月が近づいてきました。社民党が主張するグアム移設どころか、沖縄県外への移設も難しいと見る向きがもっぱらのようですが。
福島 そうとは言えません。アメリカとしてもグアムの空港をハブ化したいと考えているようですから、ベストの移転先はグアム。社民党は一貫して、そう考えています。
―最終的に社民党の思いどおりにならなかったら?
福島 いまは最終的な結論がより良きものになるよう、ギリギリまで頑張って主張することしか考えていません。私は国会議員になって今年で12年になります。これまでの野党経験から言えるのは、この件に限らず、"数"の論理から言えば通らない、しかたがないと思っている限り、次の展開はないということです。
ダメだったらどうしようかと考えるヒマがあったら、それより全力で頑張れと言いたい。
沖縄に国内の75%の米軍基地が集中している。もうこれ以上の建設はやめてくれというのが、沖縄の民意なのです。この声に内閣は耳を傾けるべきです。
―鳩山総理がクビをかけて決断すべき問題ですね。
福島 そういう表現はどうかと思いますが、政治家の進退云々というより、もっと根本的な、何のための政治かということが問われる問題だと考えます。
グアムへの移設は実現できないことではありません。政治に必要なのは、あらゆる可能性にかけていく「技術」と「情熱」なのだと思います。
―鳩山総理の意中には既に移転先について、いくつか案があるという側近の話もあります。
福島 鳩山総理のいちばんいいところは、なんといっても心根の優しさです。選挙中に総理が、「国外、最低でも県外への移設」を明言されていたのは、票集めのためではなく、本当に沖縄に思いを寄せていたからこそでしょう。人間は変わるものではありますが、鳩山総理の優しい気持ちは決して変わらないと思うのです。
ですから、いまも「国外・県外」と考えていると思います。沖縄の民意を切り捨てるような決定をしては、優しい内閣ではなくなってしまいますから。
―その優しさが原因なのか、普天間問題にしても、他の問題にしても、なかなか結論を出せない。「何も決められない内閣」というふうに国民の目には映っているのでは?
福島 残念ながら内閣支持率は低下の一途ですが、その原因は、ぐずぐずしているということではなく、やはり「政治とカネ」の問題が大きいでしょう。
―「政治とカネ」の問題では、鳩山総理にも小沢一郎幹事長にも辞任すべきだという意見がある。小沢幹事長の場合、各種の世論調査では70%くらいの人が「幹事長を辞任すべきだ」と考えています。福島さんはどう思いますか。
福島 それはご本人が判断されることです。小沢さんはすでに説明は十分果たしたと考えられている。それに対して、世間の方は説明が十分ではないと考えています。このギャップが大きいように思います。
―世間の人が本当に聞きたいのは、たとえばなんでそんなに不動産を買い集める必要があるんですかといった部分だと思うんですが。
福島 その通りですね。そこは私も説明すべきだろうと思います。小沢さんは法律的な観点から、不起訴になったことで、すべてクリアになったと考えておられる。でも世間はそうは思っていない。説明の中身の捉え方にギャップがあります。
―小沢幹事長とは福島さんからご覧になって、どういう人ですか。
福島 「権力」というものがどういうものであるかを、非常によくわかっている政治家です。 現在、社民党が政局的にいかに重要な存在であるかを最もよくわかっているのも小沢幹事長です。なぜなら、地方へ行くと必ず、社民党の様子を見にいく。社民党は地方議員もそれなりにいるわけで、国会議員だけが政治家なわけではない。
権力を強化するには地方議員も取り込むという、政治のダイナミズムをよく知っているわけです。タイプとしては私と小沢さんは正反対だけれど、学ぶべきところはあります。
―どんなところですか。
福島 とにかく24時間365日、権力のことばかり、選挙に勝つことばかり考えている。そのエネルギーには感服します。本当にスゴイ。私も党首として、小沢さんの爪の垢を煎じて飲んだほうがいいと思うほどです。