私は大学を卒業後、新聞社でアルバイトをしたり、出版社に勤めたりした挙げ句、フリーランスのライターになりました。
厳しい競争社会であるライターの世界。その荒波に揉まれ、私のオリジナリティってどこにあるんだろう……と、ずいぶん思い悩んだこともありました。けれど、今にして思えば、先生と文通をしていたあの頃のスタイルが、私の文章の礎になっていたんです。
先生は、樋口一葉に惚れ込んでいました。そして私も、20年ほど前から一葉の作品に惹かれるようになったんです。まるで、同じ道を辿るようにね。
今はすっかり疎遠になってしまいましたが、私にとって先生は、いまだに追いつけない「師」なのだなぁと思うのです。
「週刊現代」2014年3月29日号より