2014.06.11
# サッカー

二宮寿朗「米国、観客とスタジアムの幸福な関係」

二宮 寿朗 プロフィール

最下位レイズに見た「楽しませる」配慮

 レイモンド・ジェームス・スタジアムに心を揺さぶられたことで、メジャーリーグのタンパベイ・レイズのゲームをどうしても生で観戦したくなった。代表練習の取材後に何人かでレイズの本拠地トロピカーナ・フィールドに駆けつけ、フロリダ・マーリンズ戦をナイター観戦してみた。

 トロピカーナ・フィールドは屋根つきのドーム球場。お世辞にも雰囲気があるとはいえないが、「観客を楽しませる」ポイントに立つと、ここでもいろいろな発見があった。レイズは現在、アメリカン・リーグ東地区の最下位。マーリンズ戦は人気カードでもなく、スタジアムは4割ぐらいの入りだろうか。それでもお客さんのノリは最高だ。

 ファンが一斉にカウベルを鳴らすのが、レイズの名物らしい。確かに、チャンスになると一斉に鳴らしていた。イニングの間になると、必ず何かのイベントがある。トリビアのクイズあり、某飲料会社のマスコットレースがありと、大型ビジョンに流されるイベントに逐一、ファンが反応している。単に、場つなぎで流しているようなものじゃない。

 7回に入ると軽快なミュージックが流れ、老若男女が席を立ってその場で踊り出す。かと言ってゲームに入ると選手紹介は別にしても、しっかりと試合の中身を見せてゲームにフォーカスさせる。

 我々は3階席、20ドルの席で観戦したが、まずまず見やすかった。1階の一塁ベース奥にはカフェがあり、食事をしながらゲームを楽しんでいるファンもいる。各々のファンのニーズに応えながら「楽しむ」「楽しませる」の相互関係を、あらゆるところで見ることができた。

 バックスクリーンには大きな水槽があり、そこにはチームのシンボルであるデビルレイ(エイ)が泳いでいるというのも面白い。また、楽しませるだけでなく、試合が終わったらスムーズにスタジアムの外に誘導してくれるなど、観戦後のストレスもない。移動にはエスカレーターがついていて、子供や年配のファンにも配慮がなされていた。

 米国のスタジアムに対する顧客満足度は高い。日本のサッカースタジアムは欧州から学び、今も参考としているが、米国で根付く「楽しませる」というエンターテイメント性にも学ぶ点は多くあるように思う。行って楽しいと思えるからこそ、ファンはスタジアムまで足を運ぶのだ。

 スポーツを支えているのは、ファンである。海賊船の大砲まではスケール的に無理としても、Jリーグのクラブにはファンの心に打ち込むサービスというものを今以上に模索してもらいたいと願う。

 ちなみにレイズはこの日で9連敗だと、帰りのタクシーでドライバーが教えてくれた。
 その横で、レイズの帽子をかぶった親子連れのファンが笑顔で歩いていくのを見た。「楽しかったね」と親子の顔には書いてあった。

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