しかも特筆すべきは、川上村の健康老人率(要介護・要支援を受けていない高齢者の割合)が85・1%ということである。74歳までに限ると96・7%になり、この数字も全国一である。つまり川上村は、日本一裕福なだけでなく、「日本一健康長寿な村」でもあるのだ。
地域全体で子供を育てる
なぜ川上村の高齢者は元気なのか。ある村民にその理由を尋ねた。
「毎日早く寝て、昼間は畑に出ているだけで特に何かに気を付けているわけでもないけどなあ。まあ農家だから、ある程度自分で自由にやれるし、都会のようなストレス社会とは正反対の環境かもしれんな(笑)」
藤原村長は、ヘルシーパークと呼ばれる複合医療施設を作ったことも関係していると言う。
「ヘルシーパークは、村民の心身の健康増進を目的として作った施設なんです。診療所とデイサービスのほかに、大浴場やトレーニングルームがあり、24時間の訪問介護も行っています」
この施設ができて以来、川上村では家族や看護師に看取られて自宅で亡くなる人の割合が、なんと5割を超えているという。
「全国平均が約12%だから、これは驚異的な数値ですよ。最期の瞬間まで、質の高い人生が送れることも村の誇りの一つです」(藤原村長)
さらに驚くのが、元気な高齢者が多いだけではなく、若者も多いことだ。川上村は後継者となる若者が、都会から帰って来る珍しい農村である。
最新のデータによると、川上村の農業従事者は30代が10%(全国平均は3・2%)、40代が20・2%(同5・9%)と圧倒的に若い。全国の農村で過疎化、高齢化が進み、後継者問題が顕在化しているなか、これは目を見張る数字である。
県外に進学し、卒業後、川上村に戻ってきた木田裕貴さん(22歳)がその理由を語る。
「レタス産業は頑張った分だけ稼げるところが、若者にも受け入れやすいと思う。それに川上村は都会と違って地域のつながりが強いから、何かあってもすぐに助け合えるのがいいですよね。ただ村にはコンビニもカラオケボックスもないから、遊ぶといったら家で仲間と飲むか、車で1時間かけて、山梨県の甲府まで行かなくちゃいけないけど(笑)」
せっかく、木田さんのように村に戻ってきても、結婚相手がいないと定住は続かない。そこで役場は、『郷コン』と呼ばれるイベントを開催して、独身男性に対して、県外の女性を紹介する機会を作っている。その効果もあってか近年は、都会から嫁いでくる女性が増加しているという。