毎年、700人ほどの中国人実習生が村にやってくるが、彼らは約7ヵ月の短期間労働を終えると祖国へ帰ってしまうため、翌年にはまた一から指導しなければならないことも、農家の負担となっている。
とはいえ、中国人実習生なしに収穫時期を乗り切ることはできない。そこで林さんは以前、商社に勤めていた経験を活かし、現在は独自のルートを使い中国人実習生を雇っているという。
「自分で直接中国に行って面接を行い、短期ではなく3年間の契約を結ぶんです。もちろん農閑期も彼らに給料を支払わなければならないので、コストはかかるが、それだけ信頼関係も厚くなる。3年も一緒にいれば情もわくし、まあ家族が増えるような感覚です」
都会で就職した経験を活かし、農協を通さず直接、スーパーなどと契約することで収益を上げる農家も増えているという。川上村は教育に力を入れることで、さらに発展していく好循環を生み出しているのだ。
取材で出会った村民たちに「川上村での生活は幸せですか?」と聞くと、異口同音にこんな答えが返ってきた。
「苦労もあるし、不便だと感じることもある。でも、この村で一生暮らしていきたい」
誰もが自分の住む村を愛している—。これこそが、川上村が「日本一の村」と呼ばれる本当の理由なのかもしれない。
「週刊現代」2014年6月26日号より