これじゃ納税が虚しくなる「税金逃れ」指南役は国税OBたち 国税庁よ、恥を知れ!
徴税権力の最高峰に君臨する国税庁。その足元で国税OBたちの暴走が始まった。脱税指南、企業との癒着、現役職員との共謀—。「天下の国税」が聞いてあきれる、異常事態が勃発していた。
マルサのプロが不正を手助け
企業や個人の脱税マネーを見つけ出して徴税する番人が、OBになったとたんに専門知識を悪用して取り締まられる側の用心棒として報酬を稼ぐ—。そんなモラルの欠片もない「不良国税OB」が後を絶たない。
自民党・金丸信元副総裁の巨額蓄財事件を暴くなど、戦後数々の大型経済事件を解明してきた職人集団・マルサ(国税局査察部)も例外ではない。
7月8日、ラブホテル経営会社の脱税を顧問税理士の立場で手助けしたとして、マルサOBで税理士の横井豊氏(65歳)が大阪地検特捜部に在宅起訴された。
横井氏は、大阪国税局査察部の主要ポストである査察総括第2課長や福岡国税局調査査察部次長などを歴任。大阪国税局管内の大型税務署の一つである南税務署の署長を最後に'08年7月に退職し、翌8月に税理士登録していた。
「マルサのエリートコースを歩んだ大物の一人です。摘発されたラブホテル経営会社の顧問税理士のポストは、'11年末頃に知人を通じて紹介され、顧問に就いた」(在阪全国紙社会部記者)
起訴状などによると、ラブホテル経営会社は昨年9月までの2年間に消費税約2000万円を脱税。課税控除額を過大計上するなどして納税額を圧縮する手口で、横井氏はその不正を手助けしたとされる。
「横井さんは、張り込みから尾行、帳簿や銀行口座の分析などまで手掛けて脱税を暴くマルサのプロ。脱税犯と対峙するギリギリの仕事をしてきた人で、税務の知識から税務調査への対応まで隅々に知見がある。今回は消費税の控除対象となる管理料を架空計上するやり口だったが、横井氏がその管理料をいくら計上するかなどを決めていたという」(大阪国税関係者)
今年6月13日には、名古屋国税局OBで税理士の鈴木健彦氏(61歳)が、法人税法違反で名古屋地検特捜部から在宅起訴された。
「顧問先企業8社の脱税に協力したとして起訴されました。その手口は巧妙で、鈴木氏が管理するペーパー会社の銀行口座に顧問先から架空の外注費を振り込ませるなどして、約3年間で合計1億5000万円ほどの所得隠しを指南。口座に振り込まれた額の数%を手数料として受け取り、残りは顧問先に戻していたと検察側は見ています」(別の社会部記者)
鈴木氏は、名古屋国税局内の税務署などで主に法人の税務調査を担当してきた元ベテラン調査官。約20年にわたって勤務した後、'92年に退職してからは愛知県、三重県を中心に税理士業務を行っていた。多くの顧問先を抱える人気税理士だったが、地元紙に「脱税請負人」と報じられる注目人物でもあった。
「企業側が国税OBを顧問として迎える理由の一つは、国税OBだからこそわかる際どい節税手口を伝授してもらいたいから。OB税理士側としてはその期待に応えないと客が離れてしまうので、危ない橋を渡ろうとする者が出てくる。鈴木氏の場合、実は過去に懲戒処分を受けて1年間の業務停止処分を受けたことがある。今回も『顧客から頼まれて断れなかった』と語っており、懲戒処分された反省が活かせず、ついに起訴された形です」(同前)