
2001年に世界で初めて人のゲノム(全遺伝情報)を解読したことで知られる、米国のクレイグ・ヴェンター(Craig Venter)氏。その一方で、(やはり世界で初めて)遺伝子配列を特許出願し物議を醸すなど、毀誉褒貶の激しい人物でもある同氏が、今度はゲノム解析をベースにして「老化に伴う様々な病気」を治すための会社を立ち上げた。
●"Three Questions for J. Craig Venter" MIT Technology Review, July 30, 2014
老化を左右する後天的要因も検査
ヴェンター氏が「Human Longevity(人間の長寿)」という名前の会社を立ち上げたのは、今年の3月。同社は現在までにボランティアの被験者500人のゲノムを解読した。このゲノム情報に加え、今後は被験者の血液や心臓の検査、さらには脳の大きさの測定など、包括的なヘルスケア情報の収集に取り組んでいく。
特に血液検査では、被験者の血液中に存在する様々な代謝物を分析するばかりか、体内に潜む無数の微生物のゲノムまで解析して、人間の老化メカニズムの解明に取り組んでいくという。これらは、いわゆる「メタボリック・データ(血液中の代謝物に関するデータ)」と呼ばれ、人の遺伝子に深刻な影響を与える環境的要因(老化を左右する後天的要素)と見られている。
遺伝子解析を中心にした、この種の包括的な研究プロジェクトには、つい先日グーグルが発表した「Baseline Study」がある(参照 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39983)。しかしヴェンター氏は「我々のプロジェクトに比べれば、(グーグルのBaselineは)赤ちゃんの歩幅(のように小さなもの)だ」と歯牙にもかけない。
