2014.08.17
# 本

医学会には薬の宣伝をする「御用学者」がいる---上昌広『医療詐欺』第1章より

上 昌広医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社)第1章「先端医療と新薬を支配する「医療ムラ」は癒着と利権の巣窟」より

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不都合な真実② 医学会には薬の宣伝をする「御用学者」がいる

著者の上昌広氏

東大病院にみる悪質さ

このような医師と製薬会社のズブズブの関係は他にもあります。

2014年に入ってから明らかになったもののなかで有名なのは、やはりノバルティスファーマ社が裏で糸をひいていた「東大病院血液・腫瘍内科事件」ではないでしょうか。

東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科(黒川峰夫)教授を中心に二二の病院で構成する臨床研究グループ(TCC)がおこなった医師主導臨床試験「SIGN研究」において、ノバルティスファーマ社のMR(医薬情報担当者)が、実施計画書や患者同意書の作成に不適切に関与していたのです。

SIGN研究は、慢性骨髄性白血病の治療薬グリベックの副作用を評価する「医師主導臨床研究」ということですが、これも案の定、グリベックを販売するノバルティスファーマ社が仕切っていたのです。

事実、この臨床研究に用いられた「実施計画書」「説明文書」「患者同意書」などの資料というのは、全てのファイルのプロパティーに「会社Novartis」と示されていました。

さらに、2013年10月に開催された日本血液学会学術集会で用いられたパワーポイントファイルのプロパティーにも、ノバルティスファーマ社の東大病院担当者の名前が記されていたほか、TCCの資料自体にも同社のクレジットが入っていました。

この背景には、研究責任者である黒川教授が、同社のアドバイザーを務めていること、そして同社から奨学寄付金を受け取っていることがありますが、この研究において患者側に提供された「説明文書」には、そのような事実は伏せられています。

先ほどのバルサルタン事件と同様の構造がありますが、こちらのほうが悪質さでは計り知れません。なぜかといえば、医師が製薬企業と結託して患者を騙し、その見返りとして金銭を受け取ったという見方もできるからです。

医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい
著者=上 昌広
講談社/907円(税込み)

◎内容紹介◎
STAP細胞騒動、終わりなき患者のたらい回し、何を信じてよいのかわからない高度医療の実態・・・、医療崩壊列島ニッポンで超高齢社会を生き抜くための 知 恵を、「医療ガバナンスの旗手」が授ける。本当に役立つ医療とは? 医療をダメにする本当の「癌」とは? 患者=一般市民だけが知らない「医療の不都合な真実」を糺す!

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