「居・職・住」のバランスを保つために、生きたい場所で働く---京都移住計画代表・田村篤史氏インタビュー

「働く」は、一人ひとりオリジナルだ。学生時分からフリー編集者として活動してきて、そのことを実感してきた。ところがこの春に臨んだ新卒一括採用では、その感覚が通用しなかった。筆記テストや面接を何回やっても、じぶんを見てもらえている気がしなかったのだ。
そんな想いからはじまった本連載では、これまでじぶんなりの「働く」をつくっている20代に話を聞いてきた。起業家・ブロガー・音楽家と幅広い分野で、多様で新しい仕事のつくりかたを紹介してきたつもりだ。
では次に追うべきはなんだろうか。ぼくはこれまで追ってきた流れを、個々のケースではなく、もっと普遍的な切り口で伝えることができないかと考えた。そうしておもいついたのが、住む場所。じぶんだけの「働く」は、じぶんだけの「住む」と密接につながっているのではないか、という発想だった。
そんなわけで、今回のテーマは「移住」だ。話を聞いたのは、京都移住計画代表の田村篤史さん。現在30歳。京都でフリーランスとしてキャリア支援の仕事をしながら、代表を務める会社では地域振興の企画・コンサルティングもおこなっている人物だ。
元々は、東京の人材系企業で4年間ほど、転職支援業務をおこなっていたという田村さん。現在は地元京都で移住検討者へのサポートをおこない、大学等でキャリアデザインの授業の外部講師も担当している彼は、まさに「職」と「住」の関係についてうかがうのに、うってつけの方だった。
浮かび上がったキーワードは、「居職住」(イショクジュウ)のバランス感覚。あなたは、生きたい場所で働いていますか?

幸せな移住のために、居職住のバランスを保つ存在でありたい
小川:今回、田村さんにインタビューするにあたって「居職住」という言葉を見つけたんです。じぶんの造語で恐縮なんですが、それを軸に今日はお話を聞こうとおもっています。イというのは居場所の「居」で・・・
田村:いや、わかります。ちょっと待ってください、まったくおなじことを以前考えていたんですよ。ほら! (PC上でメモアプリの画面を見せる田村さん)
小川:おお、ほんとですね! 意味も同じです。居場所の居、仕事の職、そして住まいの住。
田村:びっくりです。よくおもいつきましたね。まさに居場所(=コミュニティ)と、働くこと、住むことが連動するとぼくは考えています。
小川:でもこの言葉を見つけたのは田村さんが代表を務められている団体「京都移住計画」のことを調べていたときなんです。だから自然なことかもしれません。今日はこの「居職住」の相互作用についてお聞かせください。
まず読者の方向けに、田村さんから京都移住計画の活動内容をもう一度ご紹介いただけませんか? 規模感も含めてお願いします。
田村:わかりました。京都移住計画では、京都への移住検討者向けに、Webサイトや京都移住茶論(サロン)という情報交換イベントを通じて、求人や物件などの情報提供をしています。茶論はいままで14回おこなってきて、だいたい120人ほどの移住者・移住検討者のネットワークができています。
小川:ぼくは、京都移住計画は「居職住」のバランスを保つ存在だとおもうんです。昨年12月に東京で行われた茶論にはぼくも参加しましたが、ワークショップや懇親会で多くの人と話しながら情報交換ができました。
移住検討者は、京都移住計画(茶論)を訪ねることで現地コミュニティにまず触れる。そこで適応できれば、新しい仕事や住まいのきっかけを得ることができるようになってますよね。むやみに、ただ移住者の数だけを増やそうとしているわけではないように感じます。
田村:そうですね。たとえば、いきなり初対面で押しかけてきて「仕事紹介してくれ!!」というのはきびしいとおもいます。もちろん相談にはのりますが、ぼくらはあくまで任意団体であって仲介業者ではないので、自分たちがやりたいことに注力させてもらっています。
小川:だからぼくのイメージでは、京都移住計画は「調整弁」なんです。「居職住」のどれかひとつでも上手くいかなかったら、きっとハッピーな移住にはなりづらい。現地から移住者の「居職住バランス」を保ってあげる調整弁。
田村:まだできていないところもありますが、たしかにそういう存在になりたいとは日頃からおもっています。