
【第2回】はこちらをご覧ください。
聞き手・小峰隆生(筑波大学非常勤講師)
第二章 在日米軍撤退の行程表
中国は負け戦はやらない
これまで在日米軍が撤退する理由を検証してきたが、本章では、どのようなきっかけで、どこから、どう撤退するのか? その行程表をみていくことにする。
既に2013年沖縄駐留の海兵隊は、グアム、オーストラリアに撤退を開始しているが、その判断基準は、BDA(Battle Damage Assessment 日本語に訳すと、戦闘被害評価)によったものだ。米軍は、その数値によって撤退するか、否かを判断するという。
そこに「友情」だとか、「信頼」などの『情』は、入らない。ただただ合理的に判断するだけなのである。
***
---中国の戦争の始め方について教えてください。
中国は伝統的に孫子の兵法の国なので、戦争に負けると考えるうちは始めないです。即ち、負け戦をやらない国です。
---その負け戦をしない国が、こりゃ勝ち戦になると判断して出て来るのはいつですか?
BDAで判断してくるでしょう。
---それは、なんですか?
Battle Damage Assessment(戦闘被害評価)です。米軍の場合、3対1が限界です。
---中国軍の兵力が米軍1に対して、3となれば、攻めてくる。
そう考えます。
---そして逆に、米軍は撤退する。
その判断は、米軍が下すでしょう。
---その米中の兵器の数を対比させて、3対1に、いつなるのかで、在日米軍撤退の時期を予測できるということですか?
そうですね。
沖縄米軍の命運は、中台関係が握る---『沖縄米軍』
---それでは、在日米軍の基地別に判定作業をお願いします。まず、一番南西の沖縄基地です。
沖縄米軍ですね。
---はい。ここは、BDAで、判定すると、どうなりますか?
待ってください。ここは、BDA判定の前に、中国と台湾の国際関係を考慮に入れなければなりません。
---何故、沖縄米軍が撤退する理由に、中国と台湾の関係が入ってくるのですか?
台湾が中国側に付くと、ドミノ倒しのように均衡が崩れていきます。
今の中国のトップの習近平国家主席は、自分の任期内に何とか台湾をモノにしようという執念があります。台湾が中国側に付くと、沖縄の西側のガードが完全にガラ空きになります。
---側面が敵に晒されますね。
沖縄米軍の燃料は、米国本土ではなく、中東からシーレーンを通ってきています。だから、台湾が中国の手に落ちると、そのシーレーンがなくなります。
---中国はどのようにして、台湾を手に入れるのですか?
軍事的に占領するハードランディングと、台湾が、自ら望んで中国に併合されるソフトランディングの二つの場合があります。
---米国の中国情報の専門家たちは、どのような見解だったのですか?
複数の専門家たちに聞いてみましたが、あまり、良くないですね。
---良くないと言いますと・・・。
台湾出身の民進党の陳水扁総統の時は、台湾独立をぶち上げ、中国とは、「不交渉」、「不談判」、「不妥協」の三不政策を取っていました。
しかし、中国本土から来た外省人である国民党の馬英九総統になり、2008年12月から、中国が三通と言う「通商」、「通航」、「通郵」政策に変わりました。
---それは、どんな政策ですか?
台湾と中国の間で、通商とはビジネス、貿易をすること、通航とは、お互いに行き来すること、通郵とは、郵便、送金することです。
---要するに、通常の友好的な二国関係に中国と台湾がなったということですね。
そうです。逆に、米国にとっては、習国家主席と馬総統の友好関係は非常によろしくない。