2014.09.20

ビートルズの名曲とともに紡がれる、心が震える衝撃の純愛・サスペンス小説。井上夢人・著『ラバー・ソウル』が文庫版で登場!

――それって詐欺的な行為ですね。

井上 ビートルズのメンバーだってもちろん快く思ってはいませんでした。でも、圧倒的にレコード会社が力を持っていた時代だったんですよ。ようやくオリジナルと同じ形で出されるようになったのは1967年の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」というアルバムからなのです。それ以前にイギリスで出されたビートルズのオリジナルアルバムは7枚。その間、アメリカで作られたLPレコードは13枚なんですから。

――では「ラバー・ソウル/Rubber Soul」はどのような位置にあるものなんでしょう?

井上 「ヘルプ!/Help!」の次に出されたアルバムです。「ラバー・ソウル」は、ビートルズにとってとても大きな意味を持っているんです。アイドルグループだった彼らが、アーティストへ変わっていこうというときの驚きの作品。そして、その変化は彼らだけではなく、世界の音楽シーンに多大な影響を及ぼすことになります。

ビートルズは超多忙でした。果てしなくワールドツアーが続いていました。ツアーではステージとホテルと空港を行ったり来たりするだけ。自分がいまどの国のなんという名前の町にいるのかもわからない。ステージではつんざくような悲鳴の連続で自分たちの演奏すら聞こえない。野球場で行なわれたコンサートでは、音響装置がなんと場内アナウンスのスピーカーでした。舞台にはせいぜい出力100Wぐらいのアンプが並んでた。

自分たちの音すら聞こえないステージが続いていて、そんな生活が嫌で仕方がなかったんですね。「ラバー・ソウル」はそういう状態で作られました。だからなのか、みんな後ろ向きな歌詞ばっかり(笑)。

「ラバー・ソウル」はストーカーアルバム?

写真/柏原力(講談社写真部)

――ではいよいよ小説との関連性に近づいていきましょう! 「ラバー・ソウル」はレコードのA面とB面の順番に章タイトルになっています。鈴木誠という、誰からも愛されたことのない36歳の男が恐ろしいストーカーになっていくわけですが、なぜこのような物語に?

井上 「ラバー・ソウル」の14曲はすべて愛がテーマなんですけど、そのほとんどが男女のすれ違いですとか、気持ちの冷めてしまった相手に対する恨み言を歌ったものなんですね。中には「ミッシェル/MICHELLE」「イン・マイ・ライフ/IN MY LIFE」「愛のことば/THE WORD」といった一見純粋な愛の歌に思えるものがあります。でもこれね、歌詞を読むと結構怖いんですよ。「ミッシェル」はフランス人の女の子に恋をして、言葉が通じない相手にどうにかして思いを伝えたいという曲です。「イン・マイ・ライフ」はかつて暮らしてきた故郷に対する望郷の思いを歌っていて、でも君との愛にかなうものはない・・・・・・という歌ですね。なぜかどちらも相手からの距離を感じてしまう。

「ミシェル」では「I love you」が連呼されます。次が「I need to make you see」の連呼が続き「君が僕にとってどれだけ大切なのか、わからせてあげたい」と。そして「I want you」の連呼。一方的に好意を寄せられている男から「愛している愛してる愛してる」って言われたら・・・・・・。

――ぎゃああああ、怖い!

井上 最初の曲の「ドライヴ・マイ・カー/DRIVE MY CAR」だって、女優の卵を助手席に乗せる歌です。当時、ポールにはジェーン・アッシャーという恋人がいたんです。彼女は女優でした。その彼女に、ポールはふられちゃう。で、歌詞をみると、女優の卵が「私はスターになる。あなたを運転手にしてあげてもいいわ」と言ってるわけでしょう。

2曲目の「ノーウェジアン・ウッド/NORWEGIAN WOOD」なんて置いてきぼりにされた彼女の家に火をつけちゃったと言ってるし、3曲目の「ユー・ウォント・シー・ミー/YOU WON’T SEE ME」では「いくら電話をかけても話し中」だと腹を立てている。そのあと「愛してる!」と繰り返し叫ばれたら、ねえ。

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