米国の「イスラム国」空爆、スコットランド独立・・・
国連の機能不全とともに「世界は急速にばらけてきた」

米国がイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」に対する空爆を続けている。オバマ大統領はシリア領内の空爆も辞さない姿勢だ。一連の展開は、かつてのベトナム戦争をほうふつとさせる。米国は中東で再び戦争の泥沼に陥るのか。
空爆の目的を「イスラム国壊滅」に変更
米国は8月8日、イラク北部のクルド人自治区にあるアルビルとシンジャール山付近で空爆を始めた。このときは、アルビルにある米国領事館やイラク政府軍との共同軍事施設の防衛、それにシンジャール山に追い詰められた数万人のヤジーディ教徒救出が目的とされた。自国民保護と人道作戦という大義名分である。
9月に入ると、オバマ大統領は空爆の目的をイスラム国そのものの壊滅に変えた。背景には、米国人ジャーナリスト2人が殺害された件もあっただろう。インターネットに投稿された斬首映像は世界に衝撃を与えた。
11月には議会の中間選挙を控えている。かねて共和党から弱腰外交を批判されてきた大統領は、米国人殺害に対して強く反撃しないわけにはいかなかったのだ。
大統領は空爆拡大を表明する一方で、地上軍の投入は繰り返し否定している。ところが、制服組のトップであるデンプシー統合参謀本部議長は16日、上院軍事委員会の公聴会で「米国に対する脅威があるなら、私は大統領に地上部隊の投入を勧める」と語った。
大統領が空爆拡大方針を表明した後、米軍は軍事顧問団を増強しており、その規模は約1600人に達している。表向きの名目は外交公館の警備やイラク政府軍の訓練、情報収集だ。だが、精密な空爆には地上から目標を確認する必要がある。デンプシー議長の発言もそれに沿ったものだ。
シンジャール山周辺の空爆後も、効果を確認するために現地に少数の特殊部隊が派遣された。空爆に効果がなければ地上部隊の派遣が避けられないという見方もあったが、実際に現地を確認すると、ほとんどの避難民が脱出していたために幸い、見送られた経緯がある。