今宮君の場合、まだまだ伸びるし、いずれは日本を代表する選手に必ずなる。ヨソのチームの選手ではありますが、楽しみにしていますよ」
いみじくも森脇が口にした「本物のショート」とは奥行きのある表現である。今宮はどう解釈するのか。
「僕はショートは特別なポジションだと思っています。センターラインを統率し、チームを牽引する。いってみればフィールド上のキャプテンです。いいショートがいなければチームは強くならない。それだけ責任の重いポジションだと自覚しています」
仰ぎ見る頂は、はるかに高い。本人は自らのショートとしての完成度を「5合目あたり」とみる。
—理想のショートに必要な条件は?
やや間を置いて、今宮は答えた。
「愛情でしょうね。プレーに愛情がこもっているかどうか。反省を込めて言えば、プロに入ったばかりの頃はファーストが捕れないようなボールを平気で投げていた。〝(一塁に)届けばいいだろう〟って。ボールに愛情がこもっていなければ相手だって捕りにくい。それがわからなかったんです。
今は違います。相手に思いやりを伝えたい。キャッチボールの時から、それを意識してやっています」
まさか23歳に愛の尊さを教わるとは思わなかった。プレーとは愛の結晶なのか。おくりびとは一歩一歩、野球の真実の淵に近づいている。
「週刊現代」2014年10月25日号より