2014.11.08

黒田博樹の「カープ愛に」感動した! いつでも戻れるように「複数年契約」は結ばない

年俸が5分の1になっても構わない
週刊現代 プロフィール

しかし専修大の投手層が厚いわけもなく、望月は我慢して黒田を起用し続けるしかなかったという。

「それが良かったんでしょうね。年を追うごとに精神的な成長が見られるようになって、3年の後半くらいからは立派なエースになりました」

カープとのつながりが生まれたのは、ちょうどその頃だ。

専修大のグラウンドは、神奈川県伊勢原市の山奥にあり、最寄り駅から徒歩で30分以上かかる場所に位置する。交通の便がいいとは言いがたい場所だ。

そんな所に、エースとはいえ、2部リーグだった黒田をじっと見つめるカープのスカウトが現れた。他にスカウトの姿は一切ない。その男一人が、毎日のように姿を見せた。

スカウトの名は、苑田聡彦。現在広島のスカウト統括部長を務める人物だ。

当時もいまも、野球界にはプロアマ規定があり、プロの人間が大学生と話すのは禁じられていた。そのため、苑田は自己紹介すらせず、じっとグラウンドの片隅から黒田を見続けるのみだった。

苑田が振り返る。

「黒田の一つ年上に、小林幹英というこれもカープへ入団する投手がいたんです。その小林を見に行ったとき、黒田が目に止まった。球速はさほどでもなかったんですが、球に強さを感じたんです。その後、試合を何試合か見て、これは本当にいいぞと思って追いかけ始めました。

性格もプロ向きだと感じましたね。練習でも絶対に手を抜かないし、負けず嫌い。打たれると、同じ球種、コースにもう一度投げるんです。いい選手が見つけられて嬉しかった。何で他球団がいないのか、不思議なくらいでしたよ」

選手に温かい球団

やがて、黒田と小林の活躍で、専修大は1部に昇格。1部の舞台でも、同期の井口資仁(現ロッテ)や今岡誠(元ロッテ)を相手に、黒田は対等に戦ってみせる。

その頃から、徐々に他球団のスカウトも黒田に注目するようになった。しかし黒田は、誰もいなかったときから一人通い続けていた苑田の姿が、頭から離れなかった。

高校時代は控え、大学でも2部リーグ。自分を落ちこぼれだと思っていた黒田にとって、初めて価値を認めてくれたのが、苑田であり、カープだったのだ。

通い続けてくれたカープに恩返しがしたい—。その想いから、'96年、黒田は逆指名で入団を決めた。

入団後も、黒田はカープへの愛情を深めていく。

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