—噴気が活発に出ている場所では、具体的に何が起こっているのでしょうか。
「地面が温められて、湯気のようなものがモワーッと出ていることが多いですが、岩の割れ目から直接、シューッと火山ガスが出ている場合もあります」
温泉地学研究所では、地震波を利用して地中の構造を探る研究を行っており、箱根山の地下10㎞あたりに、マグマだまりらしきものがあることを確認している。群発地震が起こるたびに、そのマグマに起因すると考えられる山体膨張が発生しているという。
要はマグマが昇ってくる圧力で、山全体が膨らんできているということだ。
富士山と連動も
竹中氏は、噴気の噴出自体は、マグマとの直接の関係はなく、より浅いところで起きる現象だとして、マグマの活動の活発化と、今回の噴気は無関係ではないかという見解だった。
しかし、異なる意見もある。日本列島の地殻変動を研究してきた武蔵野学院大学の島村英紀特任教授は、
「富士山もいつ噴火してもおかしくない状態にあると地震学者・火山学者の意見はほぼ一致しているが、その富士山より箱根山のほうが危ない、とする研究者は、自分を含めて、かなり多い」
と指摘した。
「箱根は一大観光地ですから、地元ではなかなかはっきりと危ないとは言いにくいでしょうが……。日本の地震・噴火活動というのは、我々の知る20世紀はなぜか、特別静かすぎる時期でした。歴史的に見ると、1世紀の間に大噴火が3~5回起こってきたけれども、1914年の桜島、1929年の北海道・駒ヶ岳の噴火でパタリと止まってしまった。ですから21世紀には大噴火が4~5回あってもおかしくないのです」
ちなみに57人が死亡、6人が行方不明となった御嶽山の噴火も、火山学的には「規模の小さな噴火」だという。「大噴火」の定義は東京ドームの容積の約250倍、3億〓以上の噴出物が噴き出すレベルの噴火を指し、スケールの違う巨大災害を引き起こすのだ。
島村氏は、過去に起こった箱根山の噴火も、想像以上に大規模なものだったと話す。
「箱根で大噴火があったのは、約6000年前の縄文時代です。ですから文献記録には残っていませんが、地球の歴史からすればつい最近。そのときは、火砕流で周囲の低い山地が埋められて平らな仙石原になり、芦ノ湖が形成されました。
また標高911mの長尾峠という峰を越えて、静岡県側にも火砕流が流れ出している。火砕流が乗り越えてきたわけです。神奈川県側も大部分で火砕流の跡が見られて、横浜付近まで到達していた可能性もある」