押し寄せる大津波を再現! これを見ずに「原発再稼働」は語れない。電力中央研究所の迫力満点の実験をリポート

怒涛の如く押し寄せた水が瞬く間に防潮堤を駆け上り、試験水路の高さを超えるほどの水しぶきが飛び散った。その時、側壁に衝突してドカーンという轟音を発したのは、漂流物を模した鉄球だった――。
大津波襲来のシミュレーションが可能に
こんな壮絶な実験を筆者の目の前で繰り広げたのは、「世界でここにしかない」という、「陸に押し寄せた津波の流れを大規模、かつ忠実に再現できる実験設備」(津波・氾濫流水路)だ。実験は、先週水曜日(1月28日)の午後4時30分ごろに行われた。
この施設は、電力分野の先端技術の研究開発機関として知られる電力中央研究所が、千葉県我孫子市の研究拠点に新設したものだ。同研究所は、4年前の東日本大震災の教訓を踏まえて、「(海洋から防波堤などに押し寄せる津波の衝撃の検証を主目的としていた)従来の屋外設備だけでは十分な研究ができない」(水鳥雅文・理事兼環境科学研究所長)と判断したという。
建設は、構想からプロトタイプの作成、実物の工事などに足掛け3年の歳月を費やし、昨年2月に完成した。「企業秘密」というが、総工費は数億円をくだらないとみられる。
スペックを紹介すると、設備全体の幅は15m、高さは12m、長さは65mある。10㌧の水を貯めるタンクを持ち、この水を毎秒7mの流速で最大3分間流し続ける容量がある。大型体育館のような巨大な建屋の中(屋内)に建設してあるので、天候に左右されることなく、実験が可能である。
繰り返しになるが、この施設の最大の特色は、規模の大きさにある。これにより、現実の大津波の襲来に近いシミュレーションが可能になる。軽自動車や材木などの漂流物を流して、ビルや工場の模型に激突させ、どのような被害を受けるか実験できるのである。これにより、例えば、おカネのない地方の自治体でも、防潮堤を含む構造物のどこに弱点があり、どういう風におカネをかけて、効率よく強度を確保することができるかを探り出すことができるという。
