核武装の野心を国際社会に疑われないか?
「フルMOX」大間原発「建設遅延」の現場ルポ

先週金曜日(3月20日)、マグロ漁で有名な青森県下北郡大間町で、筆者は電源開発(Jパワー)が建設中の「大間原子力発電所」の現場を取材した。
誘致から31年、まだ建設中
原発は建設は長い時間がかかることが珍しくない。とはいえ、大間原発ほど長い年月がかかる例は他にない。なにしろ地元の大間町議会が誘致を決議してから31年目に突入したというのに、試運転の開始が、早くても5年先の2020年以降とみられているのである。
市長自ら「無期限の建設凍結」を求めて東京地裁に提訴した函館市のように、今なお、建設に立ちはだかる壁は厚い。
一方で、大間という原発を抜きに戦略的な脱原発は考えにくいという面もある。この原発は、最新の安全技術を取り入れるだけでなく、核兵器の原料になるプルトニウムを燃料として効率的に燃やしてしまう世界初の「フルMOX」型原発だからだ。ひとたび始めれば、運転している間は、資源の有効利用も可能という。
今週は、これまでの大間原発を巡る紆余曲折を整理したうえで、今日的な意味を整理しておきたい。
3月下旬とはいえ、津軽海峡を望む本州最北端の地は、まだ春が遠い。たまたま取材したのは、強風で有名な西風がほとんどなく、海も穏やかだった。とはいえ、灰色の絵の具を撒き散らしたような曇が広がる空は、典型的な北国の冬のものだ。30㎞ちょっと北に位置する函館山は、肉眼では、おぼろげにしか確認できなかった。
大間原発の建設現場は、戦前、軍馬の放牧地として使われた、なだらかな丘陵地にある。敷地は広大だ。東京ドーム約28個分に相当する130万平方メートルを誇っている。
その地で、これ以上ゆっくりは進められないというぐらい遅いスピードで、細々と、最新鋭原発の建設が進められていた。働いている作業員はまばらで、稼働している大型クレーンも撤去が相次ぎ、残っているのは1基だけだった。
実は、筆者は2012年5月にも大間原発の取材を試みている。同じ下北半島にある「東北電力・東通発電所」の取材リポートを、2012年5月29日付で本コラムに寄稿(『「東通」と「大飯」はまったくの別物だ! 安易な臨時再稼働を唱えた橋下発言の罪深さとは』)した時のことである。
当時、大間原発は本体の建設工事を休止中で、「今後のめどがつくまで待ってほしい」と敷地内部の取材を拒絶された経緯がある。が、あの当時の方が、土木工事のために行き交うダンプカーが今よりはるかに多く、建設現場は活気に溢れていた。
