バラマキと財政健全化を「両立する」安倍マジックのタネが尽きる日

まるで北上する桜前線を追いかけるかのように、“安倍マジック”が先週、満開のときを迎えた。
15年ぶりの株高騒ぎ
バラマキを復活して一般会計を過去最大に膨らませると同時に、年来の課題だった財政健全化目標も達成するという魔法のような2015年度予算が先週木曜日(9日)、国会で可決され、成立したのである。株式市場に目を転じると、先週末(10日)には、日経平均株価が一時2万円を突破し、15年ぶりの株高騒ぎに沸いた。
だが、この2つには、国家的な分厚いドレッシング(お化粧)という共通点がある。
そして、政府は、あろうことか新たな財政健全化目標の設置という形で、さらなる厚塗りを試みようとしている。
桜は盛りの短いものだが、華やかに見える経済の宴は永遠に演出し続けられるだろうか。
2015年度予算は、一般会計の歳出総額が96兆3420億円と前年度より4596億円も膨らんだ。その大盤振る舞いにもかかわらず、新規の国債発行額は4兆3870億円減の36兆8630億円にとどまった。誰の目にも、“安倍マジック”とでも呼ぶべき離れ業に映るはずだ。
結果として、当初予算段階とはいえ、政府は2015年度が達成期限だった財政健全化の中間目標を達成した。税収で社会保障や公共事業などの政策経費をどの程度賄えているかを表し、新規の国債発行を除いた歳入から、国債の償還・利払い費を除いた歳出をさし引いて算出するプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字が13.4兆円にとどまったのだ。この赤字額は名目の国内総生産(GDP)の3.3%に当たる。これによって、2010年度(6.6%)から「5年で半減」させるという財政健全化目標を達成した。
では、なぜ、このようなマジックが可能だったのだろうか。
答えは簡単だ。国家の税収が増える、つまりわれわれ納税者が納める税金が増えるのである。2015年度の税収は、54兆5250億円と24年ぶりの高水準になる見込み。前年度より4兆5250億円も増えるのである。
税収が増えた原因は、税率を5%から8%に引き上げた昨年4月の消費増税である。前年度より1兆6860億円の増収が見込まれている。企業業績の回復や賃金の上昇で所得税・法人税なども2兆8380億円の増収になる見通しだ。金額は小さいが、税外収入も前年度より3226億円伸びる見込みだ。
以上の説明で、マジックのタネは明らかだろう。税収と税外収入が5兆円弱増えるから、歳出を4596億円膨らませても、新規の国債発行を減らしたうえで、財政赤字を縮小するお釣りが出たのである。