2015.05.13

これではまるで「人間キャッチボール」!
安倍官邸が推し進める規制緩和の弊害と人材派遣業界の闇

中沢 彰吾

矛盾する労働者派遣法と労働基準法

――今年3月には、厚労省の幹部による「派遣労働は使い捨て、モノ扱い」発言が報じられるなど、人材派遣業界の闇は深いものがありますが、中沢さんはその背景をどう分析していますか?

中沢 かねて政府・厚生労働省は人材派遣について、「労働者にとって有益な雇用形態」であり、「特別なスキルを生かした熟練労働」であると主張してきました。

しかし、たとえば塩素ガスがたちこめる密室で6時間にわたって「いちごのへた取り」をさせたり、倉庫内で1日中カッターナイフで「ダンボール箱を解体」させたりするほか、労働者の経験やスキル、人間性、人権を無視して、仕事内容や待遇面のウソをつき、支払うべき賃金を踏み倒すこともあった人材派遣が、本当に「労働者にとって有益な雇用形態」であるとは、私には到底思えません。

人材派遣をめぐる諸問題が根深いのは、経費削減や税金の無駄遣いの抑止、法律遵守や公共の福祉への貢献を求められる多くの団体や企業が、事業入札に安値で臨む悪質な人材派遣会社を「歓迎」している点です。

落札させる際、その人材派遣会社が労働者をどう処遇しているかがまったく考慮されていません。人材派遣とはいわば、使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任は負わず勝手にクビにできるという、派遣を受け入れる企業にとって極めて好都合なシステムなのです。

厚生労働省は、労働基準法と労働者派遣法によって派遣労働者は保護されているといいますが、実はこれら2種類の法律は矛盾しています。

たとえば労働者派遣法には、派遣労働者が無期雇用の常勤労働者に転換できるよう措置を講じる努力義務や、派遣労働者が派遣先の正社員と変わらぬ待遇を確保できるよう配慮する義務が書かれてあります。

ですが、こうした条文は人材派遣会社の事業動機と対立するものです。派遣労働者が次々と無期限雇用の正規社員になってしまったら、人材派遣会社にとってはピンはねの手駒が減って存続が危うくなります。また、クライアント(派遣先)に低コストをアピールしたいのに「派遣労働者を正社員なみに手厚く扱え」とは口が裂けても言わないでしょう。

労働者派遣法が人材派遣会社に対し、「登録労働者を減らして貴社が自然消滅するよう努力しなさい」と言っているのは、過去長い間、労働者からのピンはね搾取を禁じてきた労働基準法などに無理やり整合させたからです。労基法の肝は労働者の保護ですから「人身売買にも通じる人材派遣なんかやめてしまえ」という結論にならざるをえません。

ところが、その一般労働者派遣を「堂々とやっていいよ」と認めているのが、労働者派遣法なのです。