
中国人富裕層が押し寄せる「訪日医療ツアー」
「日本のしっかりした病院でちゃんと検査してもらえて、どこも悪くないとわかってホッとしました。これで安心して北京に帰れますよ。あと2~3日、温泉にでも行ってゆっくりすればよかったかな」
北京で事業を営む50代の裕福な夫婦は、すっきりとした表情でこう話す。日常の激務に加え、PM2.5(微小粒子状物質)の影響で、最近咳き込むことが増えてきたような気がして心配していたが、とくに問題がないことが判明し、晴れやかな表情で帰国した。
昨今、中国人観光客による「爆買い」が注目を集めているが、この夫婦のように、ショッピング目的ではなく、健康診断のためにわざわざ日本の医療機関にやってくる中国人富裕層が急増している。
旅行会社ビッグホリデーインターナショナルのホームページを見ると、「PET/CT検査と東京の休日4日間」という中国人向けのツアーが目に留まる。
詳細を見ると、1日目、成田空港(または羽田)に到着後、中国語ガイドが出迎えて専用車でホテルへ。医療コーディネーターがホテルを訪問し、検査の流れなどを説明し、夕食にご案内。2日目、午前中に日本医科大学検診医療センターへ移動。全身PET-CT検査、頭部MRI、腫瘍マーカー、血液検査、脳検査を実施(4~5時間)。検査の間、医療通訳士が言語面でサポートする。午後は都内観光(浅草見物や銀座でショッピングなど)。3日目、フリータイム。4日目、中国語ガイドが専用車で見送り、帰国というスケジュールだ。
これは夫婦2人で参加した場合の参考プラン。同社によると、現時点は体制の事情で同ツアーを休止しているというが、中国語ガイドや医療コーディネーターが専属で付き添うので言葉の壁がなく、全身を丁寧にチェックしてくれるという充実した内容は魅力的だ。
日本旅行も09年から「訪日医療検診ツアー」を実施している。PET検診だけなら1泊2日からあり、観光もセットにした4~5日のツアーの人気があるという。料金は検診内容によって幅があるが、平均的なツアー代金は100万円ほどだという。
また、ツアーではなく、在日中国人の友人を頼ったり、知人から紹介されたりする形で、直接日本の医療機関に申し込みをする中国人もいる。
千葉県鴨川市に本拠を置く亀田総合病院は、その先駆け的な存在だ。同病院には中国事業統括室という専門の部署があり、中国人医師、中国人看護師などが常駐。専属スタッフによる手厚いサポートで知られる。昨年は115人、今年は1~3月までにすでに59人が受診しており、受診後のアンケートでも96%以上が「満足」と答えたという。受診者は40代が中心だが、上は80代もいる。PET-CT、大腸内視鏡など中国では受けられない検査が人気だ。