ヤマダ電機が安売りをやめる!?
ジレンマ解消へ不採算店の閉鎖は正解か

家電量販業界のガリバー、ヤマダ電機の凋落に歯止めがかからない。先月7日に発表した2015年3月期は最終利益が前期比50%減の93億4000万円にとどまった。これは、期中に東日本大震災が起きた4年前(2011年3月期)の実に7分の1以下の水準だ。
先月25日になって、同社は堪らず、今年4、5月の2ヵ月で全国の46店舗を閉鎖すると発表した。ディスクロージャー(情報開示)の悪さでは定評があり、アナリスト泣かせで知られる同社にしては、異例の措置と言ってもよいはずだ。
しかし、資本市場の評価は冷ややかだった。日経平均株価が27年ぶりの11連騰と歴史的な上昇相場に沸く東証第1部にあって、ヤマダ電機株だけはまったくの蚊帳の外。店舗閉鎖の発表から5月末まで5日続落となったのである。
かつて同社を業界トップの座に押し上げた武器は、ライバルとは比較にならない強大な購買力を背景にした「圧倒的な安売り」だった。その武器を封印して、採算重視に舵を切って久しいヤマダが、かつてのような輝きを取り戻す日は来るのだろうか。
40を超す店舗が「閉店セール」
ヤマダ電機の動きがおかしい――。5月下旬、同社をモニターしているアナリストたちの間に静かな動揺が広がっていた。ヤマダの店舗が各地で配っていたチラシを集めて分析を続けたところ、実に優に40を超す店舗が閉鎖に伴う「閉店セール」を開催することがわかったからだ。閉鎖数が45にのぼるとの分析もあった。これまで家電量販店の店舗閉鎖と言えば、月に1つか2つというのが常識だ。その常識を覆す“事件”が起きようとしていた。
そして、5月24日。アナリストたちの分析は見事に的中した。日本経済新聞の朝刊が1面トップで「ヤマダ 40店一斉閉鎖 月内、都市部にシフト」と報じ、その正しさを裏付けたのだ。
ディスクロジャーを求める資本市場の声は沸騰した。翌25日、ヤマダは堪らず、1枚紙のプレスリリースを公表した。そこには、同社が「店舗効率の改善による収益性の向上を図って」いるとしたうえで、「その一環として平成27年4月から5月末日までにスクラップ&ビルドや業態転換を含め46店舗の閉鎖を予定しております」と記されていた。
これは、今年3月末の同社の単体直営店688の6.7%に達する規模である。人材は配置転換で対応し、雇用は維持するというが、遠隔地への転勤などで退職せざるを得ない従業員が出るのではないかと懸念する声は絶えない。
店舗閉鎖騒動に先立つ5月前半に公表されたヤマダ電機の業績は惨憺たるものだった。冒頭で述べた最終利益だけでなく、売上高が前期比で12.1%減、営業利益が同41.9%減、経常利益が同29.2%減と主な指標はそろって大幅なマイナスを記録。待ったなしの体質転換を迫る危機の存在が浮き彫りになっていた。